➡➡腱鞘の中に『壁(隔壁:かくへき)』がある!
「ドケルバン腱鞘炎」は手首の親指側に起こる腱鞘炎です。
このブログでも以前紹介しました。(以下の記事参照)
http://pain-physio.net/この動作で痛みが出たらドケルバン腱鞘炎 怪し/
http://pain-physio.net/ドケルバン腱鞘炎の方、手首のあの位置で親指を/
専門的な説明になりますが、ドケルバン腱鞘炎を起こす腱鞘には「2本の腱(長母指外転筋腱と短母指伸筋腱)」が通ります。→親指を伸ばしたりする働き
1)1つの腱鞘の中に2本の腱が入る。
2)五本の指の中で親指を使う頻度が多い。
上記の理由から、この部分に腱鞘炎が起こりやすい、と考えられます。
出産・閉経後の女性に起こりやすいと言われていて、男性より女性に多くみられる腱鞘炎です。まだ原因の判明はしていませんが、女性ホルモンが影響している可能性があるとも言われています。http://pain-physio.net/女性に◯〜◯倍多い ドケルバン腱鞘炎/
〈ドケルバン腱鞘炎の治療の流れ〉
リハビリテーション→症状が寛解しなかった場合→注射→手術
〈手術〉
患部の腱鞘を切開し、腱鞘内にかかる圧を逃がすような措置。
何度注射をしても変わらない、手術に至るような場合はドケルバン腱鞘炎の重症化といえます。
重症化に関わる要因として、腱鞘内に『壁(隔壁:かくへき)』がある場合に起こりやすいといわれています。
1つのトンネルに2本の腱が入るだけでなく、その腱と腱の間に壁が存在するため、より負担がかかると考えられます。
そしてこの『壁』は、実に70%以上の方にあるとも報告されています(1)。 『壁』がないのが正常なのに、これではどちらが正常かわかりませんね(*_*)
しかも厄介な事に、この『壁』を外側から判断することは出来ないのです。
手術をすれば腱鞘の中を見れるので『壁』の有無を判断できますが、全ての方に施術するわけではありません。
近年、手術以外で『壁』を見る方法が報告されました。それは「エコー検査」です。これにより、壁の有無を確認出来るようになりました(2)。
僕も臨床でエコーを使っているので、患者さんの 腱鞘内の壁を確認しています。壁の有無だけではなく、炎症により腱鞘が厚くなっているかなどの判断もできます。
エコー導入前は100%不可能でした!
最近では、エコーで壁の有無を早めに確認し、もし壁があった場合は早いうちから装具療法を勧めたり、症状が変わらない場合は早めに医師と相談するようにしています。
また、患者さんにも予め腱鞘内に壁があることを伝え、重症化を防ぐため日常生活で無理をしないようにしてもらっています。
「腱鞘炎」なので、痛みをこらえてそのまま使ってしまい、症状が悪化する方も少なくありません。
まず、自分はどのタイプのドケルバン腱鞘炎なのかを把握してもらう事が、治療の第一歩になると思います。
※負担がかかる動作(ドケルバン腱鞘炎)についても以前記事を書いているので、参考にしていただければと思います♫
引用
(1) PASUK MAHAKKANUKRAUH* AND CHANINTR MAHAKKANUKRAUH et al. Incidence of a Septum in the First Dorsal Compartment and Its Effects on Therapy of de Quervain’s Disease Clinical Anatomy 13:195–198 (2000)
(2) Soo-Jung Choi et al. de Quervain Disease: US Identification of Anatomic Variations in the First Extensor Compartment with an Emphasis on Subcompartmentalization Radiology: Volume 260: Number 2