個別ストレッチでケガは減るのか?高校サッカー選手124人の研究から分かったこと

「うちの子、サッカー部で怪我ばかりしているんです」 「ストレッチをすればケガは防げますか?」

当院には、部活動でサッカーをしているお子さんを持つ保護者の方から、こういったご相談がよく寄せられます。

成長期のスポーツ選手にとって、ケガの予防は永遠のテーマですね。今回は、高校のサッカー部員124人を対象におこなわれた研究をもとに、ストレッチ指導とケガの関係について、理学療法士の視点からお話しします。

サッカーは意外とケガの多いスポーツ

世界には2億6千万人ものサッカー選手がいるといわれています。競技レベルが上がるほど、接触などによる外傷の発生率は高くなる傾向があるようです。練習よりも試合中のほうがケガは起きやすく、選手1人あたり年間1件以上のケガが発生するというデータも報告されています。

使いすぎによる慢性的な障害は、柔軟性やアライメント(体の配列)、練習環境、シューズなど、いろいろな要因が絡み合って起こるものです。当院に来られる学生さんを診ていても、股関節まわりが硬い選手ほど、そけい部や腰まわりの張りを訴えるケースが多い印象があります。

研究の内容

今回ご紹介する研究は、福井県内の高校サッカー部2校、124名の選手を対象にしたランダム化比較試験です。

【対象】

  • 国体レベルの大会に出場する高校サッカー部員124名(ゴールキーパーを除く)
  • 介入群64名、対照群60名にランダムに分けて実施

【方法】 介入群には、理学療法士が12週間、週3回の個別ストレッチ指導をおこないました。指導前には下肢の柔軟性を測定します。ハムストリングスの硬さや股関節の回旋角度、足関節の背屈角度などです。そのうえで、選手一人ひとりの硬さに合わせてストレッチ内容を決めています。ストレッチは1回30秒を3セット、選手自身がおこなう形式です。対照群はいつもどおり部活動を続けてもらいました。指導終了後も40週間、両グループのケガの発生状況を追跡しています。

結果

12週間の指導期間だけを見ると、ケガの発生率に大きな差は出ませんでした。ところがそのあとの40週間では、ストレッチ指導を受けたグループのケガの発生率が、対照群のおよそ半分にまで下がっていたんです。

内訳を見ると、効果がはっきり出ていたのは次の3つでした。

  • 接触をともなわない、練習中の使いすぎによる障害
  • 腰やそけい部、太もも、膝まわりのケガ
  • 筋肉や腱の損傷

一方で、試合中の接触による外傷(捻挫や靭帯損傷など)については、明確な予防効果は見られなかったようです。ストレッチは万能ではなく、防げるケガと防ぎにくいケガがある、ということですね。

柔軟性のテスト結果も、介入群では股関節の可動域やハムストリングスの柔らかさが、指導前と比べてはっきり改善していました。個別指導のほうが、選手が自主的におこなうストレッチよりも効果が出やすいという結果は、臨床の実感ともよく一致しています。

現場の理学療法士として感じること

この研究のポイントは、画一的なストレッチメニューではなく、一人ひとりの硬さを評価したうえで個別にプログラムを組んでいる点です。当院でも、同じ「腰が痛い」という訴えでも、原因になっている硬さの部位は選手によってちがいます。股関節の内旋が硬い子もいれば、ハムストリングスがガチガチな子もいて、そこを見極めずに一律のストレッチを渡しても、効果は出にくいものです。

部活動の現場では、時間の都合でウォーミングアップのストレッチが画一的になりがちです。それでも今回の結果を踏まえると、シーズン前に一度、専門家に柔軟性をチェックしてもらうだけでも、その後のケガ予防につながる可能性がありそうです。

まとめ

  • 個別ストレッチ指導は、練習中の非接触性の障害を減らす効果が期待できる
  • 試合中の接触による外傷には、あまり効果がない
  • 一律ではなく、個別に評価したうえでのストレッチのほうが効果的

お子さんがスポーツをされていて、体の硬さや繰り返すケガが気になる方は、一度専門家に体のチェックをしてもらうことをおすすめします。

引用:Azuma N, Someya F. Injury prevention effects of stretching exercise intervention by physical therapists in male high school soccer players. Scand J Med Sci Sports. 2020.