動くと痛いのに、立っていると楽?それは腰椎分離症のサインかもしれません
〜腰の痛み方のパターンで、早期発見のヒントになる〜
こんにちは、理学療法士の杉浦史郎です。
今回は、我々が2015年に国際学術誌『SPINE』に発表した研究をもとに、腰椎分離症に特徴的な腰痛のパターンについてお伝えします。
「腰が痛い」といっても、痛みの出方は人によってさまざまです。実は、「どんな姿勢・動作のときに痛むか」を詳しく調べると、腰椎分離症かどうかを早期に見つける大切なヒントになることが、私たちの研究で明らかになりました。
目次
腰椎分離症とレントゲンの落とし穴
腰椎分離症は、腰の骨の一部(椎弓峡部)に疲労骨折が起きる病気で、スポーツをしている中学生・高校生に多く見られます。早期に発見して治療を始めることが、骨をくっつける(骨癒合)ために非常に重要です。
ところが、早期の腰椎分離症は、通常のレントゲン(X線)では映らないことがほとんどです。骨折がまだごく初期の段階では、レントゲンで異常が見つからないまま「原因不明の腰痛」として扱われてしまうことがあります。
「レントゲンで異常なし」と言われても安心できない——これが、現場での大きな課題でした。
私たちの研究:痛みの「パターン」で分離症を見分けられるか?
そこで私たちは、「痛みの出方のパターン」が分離症の早期発見に役立つのではないかと考え、研究を行いました。
研究の概要
- 対象者:腰痛の発症から1ヶ月以内で、レントゲンに異常がない思春期の患者さん77名
- 全員にMRI検査を行い、2グループに分類:
- ESSグループ(早期腰椎分離症):41名(平均年齢14.4歳)
- NS-LBPグループ(非特異的腰痛):36名(平均年齢14.6歳)
- 痛みの評価には通常のVAS(視覚的評価スケール)に加え、「動いているとき・立っているとき・座っているとき」の3つの姿勢で別々に痛みを評価する詳細VASを使用
結果:腰椎分離症の痛みには「姿勢による差」があった
2つのグループの痛みのパターンを比較したところ、明確な違いが見られました。
| 姿勢・状況 | ESSグループ(分離症) | NS-LBPグループ(非特異的腰痛) |
|---|---|---|
| 動いているとき | 4.2(痛みが強い) | 5.3 |
| 立っているとき | 2.0(痛みが弱い) | 4.0 |
| 座っているとき | 2.0(痛みが弱い) | 4.9 |
(VAS:0〜10の数値、数値が高いほど痛みが強い)
腰椎分離症グループでは、「動いているときは痛いのに、立っていると楽・座っていると楽」というパターンが統計的に有意に見られました。
一方、非特異的腰痛のグループでは、3つの姿勢で痛みの強さに差がなく、むしろ座った状態でも痛みが強い傾向がありました。
スポーツ種目によっても分離症の発生率が違う
この研究では、スポーツ種目ごとの分離症の発生率も調べました。
- 陸上競技:参加患者の100%が腰椎分離症
- サッカー:88.2%が腰椎分離症
- 野球・バスケット・バレーボール:41〜44%程度
また、男子(62.3%)の方が女子(33.3%)よりも腰椎分離症が多い傾向がありました。これは、男子の方がサッカー・野球などのハードなスポーツをしている割合が高いためと考えられます。
この研究が伝えたいこと:「痛みのパターン」を受診のサインに
早期の腰椎分離症はレントゲンで映らないため、MRI検査が早期診断に欠かせません。しかし、MRIは設備がある整形外科ではないとけんさできないことと、腰痛のすべての患者さんに行うことは現実的ではありません。
そこで私たちの研究が示したのは、「動くと痛いが、じっとしていると楽」という痛みのパターンが、腰椎分離症を疑う重要なサインになりうるということです。このパターンを示す患者さんには、積極的にMRI検査を勧めることで、早期発見・早期治療につながります。
お子さんの腰痛が「レントゲンで異常なし」と言われていても、次のような痛み方があれば要注意です:
- ✅ 体を動かしたり、スポーツをしているときに腰が痛い
- ✅ でも、じっと立っていたり、座っていたりすると痛みが和らぐ
- ✅ スポーツをしている中学生・高校生(特にサッカー・陸上・野球など)
このような場合には、MRI検査で腰椎分離症がないか確認することをお勧めします。早期発見・早期治療が、骨の回復とスポーツ復帰への最短ルートです。
腰の痛みが気になる方は、お気軽にご相談ください。
参考文献:Sugiura S, Aoki Y, Toyooka T, et al. “Characteristics of Low Back Pain in Adolescent Patients With Early-Stage Spondylolysis Evaluated Using a Detailed Visual Analogue Scale.” Spine 40(1) (2015) E29–E34.