「腰椎分離症は問診票で早期発見できる?スポーツ現場でも使えるチェックポイントを研究で解明」
〜「うちの子、大丈夫かな」と感じたら、まずここをチェックしてみてください〜
こんにちは、理学療法士の杉浦史郎です。
「腰が痛いと言っているけど、練習を休むほどじゃないみたい……でも、本当に大丈夫かな」
スポーツを頑張るお子さんを持つ保護者の方から、こんな言葉をよく聞きます。腰の痛みは外から見えないぶん、深刻さがわかりにくく、受診のタイミングに迷ってしまいますよね。
今回は、我々が2024年に国際学術誌『European Spine Journal』に発表した研究をもとに、「どんな子が腰椎分離症になりやすいか」を問診票(アンケート)で早期に見つけられるかを調べた研究についてお話しします。難しい話は抜きにして、日常生活に役立てていただける内容をお伝えします。
目次
腰椎分離症って、どんな病気?
腰椎分離症は、腰の骨の一部に疲労骨折が起きる病気です。成長期のお子さん、特にスポーツを一生懸命頑張っている中学生・高校生に多く見られます。
つらいのは、初期のうちはレントゲンに映らないことが多い点です。「レントゲンで異常なし」と言われても、実は分離症が始まっているケースがあります。早めに気づいてMRI検査を受けることが、骨の回復にとってとても大切です。
だからこそ、「病院に行くべきかどうか」を判断するためのわかりやすいサインが必要だと、私たちは考えました。
私たちの研究:アンケートで分離症を早期に疑えるか?
腰痛で受診した18歳以下の患者さん69名に、MRI検査と自記式アンケート(患者さん自身が答える問診票)を実施しました。その結果、24名が早期腰椎分離症、45名が「原因のはっきりしない腰痛」と診断されました。
アンケートでは、次のようなことを聞きました。
- 週に何日練習しているか
- 1日何時間練習しているか
- どんなときに腰が痛むか(動いているとき・立っているとき・座っているとき)
- 痛みの場所や広がり
- 腰を反らしたときや曲げたときの変化 など
これらの答えと、実際に分離症かどうかの診断を照らし合わせて、「どの項目が分離症のサインになりうるか」を分析しました。
結果:こんなお子さんは、早めの受診をおすすめします
分析の結果、腰椎分離症と関連が見られた項目は主に4つでした。
① 週5日以上、スポーツをしている
毎日のように練習している選手ほど、分離症との関連が見られました。腰椎分離症は「疲労骨折」なので、繰り返しの負荷が積み重なることで起きます。「毎日頑張っているから腰が痛いのかな」と思ったら、一度受診して確かめることをおすすめします。決してサボりではありません。体が「休んで」とサインを出しているのかもしれません。
② 1日1.5時間以上、練習している
練習時間が長いお子さんほど、分離症との関連が見られました。週17時間以上の練習が分離症リスクと関連するという過去の研究とも一致しています。長時間練習を続けているお子さんの腰痛は、「疲れているだけ」と見過ごさないようにしてください。
③ 動いているときは痛いのに、じっとしていると楽になる
「走ったり体を動かしたりすると腰が痛むが、立ったり座ったりしていると楽」——このパターンが、分離症の特徴的なサインであることが、今回の研究でも確認されました。これは私たちが以前の研究でも報告していた、分離症に特有の痛み方です。
「痛みはあるけど座っていれば平気」という理由で受診を後回しにしてしまうケースがありますが、それこそが分離症のサインかもしれません。
④ 男の子に多いが、女の子も油断は禁物
今回の研究で最も関連が強かったのが性別でした。統計的には男の子の方が分離症になりやすい傾向があります。これはサッカーや野球など、腰への負担が大きいスポーツをしている割合が男子に多いためと考えられます。
ただし、女の子がならないわけではありません。今回の研究でも女性の分離症患者さんが診断されていますし、体操・バレーボール・陸上など腰を大きく使うスポーツに取り組む女の子にも起こりえます。「女の子だから大丈夫」とは思わず、腰の痛みが続くようなら同じようにご相談ください。
まとめ:こんなときは、早めにご相談ください
以下のチェックリストを参考にしてみてください。
- ✅ 週5日以上、スポーツの練習をしている
- ✅ 1日1.5時間以上、練習している
- ✅ 動いているときは腰が痛いのに、じっとしていると楽になる
- ✅ 特に男の子——ただし女の子も例外ではありません
これらに複数当てはまる場合は、たとえ「レントゲンで異常なし」と言われていても、ぜひMRI検査を受けることをおすすめします。
「大げさかな」と思わないでください。お子さんが腰の痛みを訴えているときは、その声をしっかり受け止めてあげることが大切です。早期発見・早期治療が、スムーズなスポーツ復帰への一番の近道です。
少しでも気になることがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。一緒に考えましょう。
参考文献:Sugiura S, Aoki Y, Oyama T, et al. “Low back pain characteristics in adolescent patients with early-stage spondylolysis: a prospective study.” European Spine Journal (2024). https://doi.org/10.1007/s00586-024-08478-1