前十字靭帯損傷をしてしまった方、必見

➡️➡️手術の後のリハビリについて(当院):その1

こんにちは♪
今回は、『前十字靭帯(膝)』の手術をした方向けの論文1)(当院スタッフ:中村恵太先生)から、術後リハビリについて紹介していきますね♫

この論文は「千葉スポーツ医学研究会雑誌」に掲載され、そこでなんと!最優秀論文賞になりました♪素晴らしい!!ですよね♪
内容が濃いので、数回に分けてご紹介していきます(^_^)それでは早速…

『前十字靭帯』・膝関節の中にある靭帯
・膝の安定に関わる靭帯
『前十字靭帯損傷』→前十字靭帯が緩んだり、切れてしまうこと。

以前よりもスポーツする方が増えて、それに伴いこの靭帯を痛めてしまう方も増加しています。
一旦切れると靭帯は再生しません。膝の安定に関わるこの靭帯が切れてしまうと、膝がグラグラしてしまいます。その状態で運動すると更に膝を捻ってしまい、痛みが強くなったり、日常生活(歩行など)の些細なことで膝を捻るようなってしまうことも…

前十字靭帯損傷は、手術で靭帯を作り直す場合が多く、この手術を「前十字靭帯再建術」といいます。

『前十字靭帯再建術をしたら、すぐにスポーツ復帰できる?』
➡️➡️手術後すぐにはスポーツ復帰はできません!

手術の後すぐには膝の曲げ伸ばしは出来ないし、筋力も低下しているので日常生活にも制限があります。そこで「リハビリテーション」の出番です!

①《前十字靭帯再建術後の運動許可の目安》…今回紹介の論文より

・術後1ヶ月…全体重かけていい(許可)
・術後3ヶ月…にジョギングを開始
・術後5ヶ月…部分的にスポーツ復帰
・術後8ヶ月…スポーツ完全復帰

*これは通常プログラム
*患者さんの状態で目標が遅れることもあり

②《前十字靭帯再建術後の膝の角度の到達目標》
・術後1ヶ月まで→膝が120°曲がる
・術後3ヶ月→しゃがめる
・術後5ヶ月→正座ができる

*膝の伸びについて→術後早期から練習を始め、なるべく早期に正常化することを目標する

③《前十字靭帯再建術後の筋力トレーニング》

・術後1ヶ月→ハーフスクワット開始
・ 膝が120°曲がる→自転車マシン開始
・筋力は状況をに合わせて徐々に↗️↗️
・術後5ヶ月→スポーツ部分復帰に向け、各スポーツ種目特有の動作を強化(ジャンプ・俊敏性のトレーニングなど)を開始

*当院では定期的に筋力測定機器を用いて、筋力を数値化して評価しています。

以上が《術後リハビリ:その1》になります。
続きはまた後ほど紹介していきますね(^_^)

引用

1)中村恵太ら, 前十字靭帯再建術後の関節可動域及び筋力改善に影響を及ぼす要因に関する検討

千葉スポーツ医学研究会雑誌 2016年 第13巻. P19

 

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番外編『論文が世に出るまで!』の巻

今日はちょっと趣向を変えて、『論文はどんな過程を経て世にでるか?』を紹介します♫

このブログでは、国内外の論文を参考にして情報発信しています。
今回説明する「論文」とは、査読付き論文です。私見が多いところはご容赦願います^_^

論文とは…
研究の始まりは「日々の疑問」です。その疑問を実際に比較したり試して、結果をまとめたものが論文です。ここでいう結果には、自分の仮説とは違う場合も勿論あります(TT)
しっかり考えられた方法から出た結果なら(たとえ仮説とは違う結果が出たとしても…)、論文として世に出すことができます。

けれど…
実験をした➡️論文を書いた➡️世に出る♪
わけではありません(TT)

論文を書き上げるまでは著者だけですが、いざ論文を投稿したら、第3者(投稿先の編集者・査読者)の目が入ります。

①論文を書き上げたら自分が載せたい雑誌に投稿
②そこの編集者が投稿した論文をチェック
→→雑誌に掲載するに値しない場合は、編集者から不採択(悲しい)のお知らせがきます(*_*)僕も経験があります。ただ、論文の内容に問題がある場合だけではなく、その雑誌のコンセプトと論文の内容が明らかに違う場合(スポーツ関係誌なのに、研究対象者がスポーツをあまりしていない…など)も不採択になります。
これから論文を書こうと思っている方は、「そういうものなんだ〜」程度に思ってくださいね。
幸運にも編集者が、この論文は検討の余地がある!と判断した場合は次のステップに進めます(もうこの時点で掲載してほしいところですが…)

次のステップで、他の研究者の目が入ります。

③編集者が、論文の内容をチェックできる2〜3名程度の研究者にその論文を送る
・これが「他の研究者による査読」になります。
・もちろん選出された研究者はその道のプロです。
・論文を隅から隅までチェックして投稿された論文を採択するかどうか?を回答します。
・この論文は掲載に値しない→「不採択」→返却

投稿した論文が掲載の価値があると判断されたら、はいどうぞ掲載!となれば楽なのですが、そうはいきません(+_+)

④「修正」が入る
・大概の論文は一発掲載されることはなく「修正」が入ります。
・例えば「この実験方法は適切ではないので、再度実験し直してください」から「ここの著者の文章は不適切なので修正してください」「この文章は説明が不足しています。修正してください」などなど多数コメントが返ってきます。
・僕も今、修正になった論文がありますが、その修正コメントがなんとA4で5ページにも及んでいます(TT)もちろん全てのコメントに回答しなくてはいけません。
④修正した論文を2〜3ヶ月の間に対応し、返送する
⑤その回答を、再び査読者と編集者が確認して、
→回答が適切→めでたく「採択」(^_^)
→回答が不適切→「不採択」(*_*)
⑤’「不採択」となった論文→また修正して違う雑誌に投稿→①〜⑤繰り返し

論文がみなさまの手に届くまで、雑誌に掲載されるまではこんな流れです♪

論文は出したら必ず掲載されるものではなく、編集者やその道のプロの研究者に査読してもらい、合格して初めて掲載されます。論文を投稿してから数日で掲載されることはなく、数ヶ月はかかります。
不採択になり別の雑誌に投稿しても、また同じ流れで査読されていくので、一つの論文が無事採択されるまでに数年かかるケースも珍しくありません。
*残念ですが、いつまで経っても世に出ない、出る事のできない論文もあります。

何人ものプロの目を通して世に出るものなので、論文は「価値がある」とされています。
これからもそんな論文を、解りやすくお伝えしていけたら…と思っています。
これからもよろしくお付き合い下さい♫

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〇〇〇部が痛い時は「股関節症」かも??

➡️➡️鼠径部(股関節の付け根)

高齢化に伴い『変形性股関節症(股関節が関節炎を起こして変形してしまう病気)』の患者さんは増加しています。
当院にも股関節の痛みを訴える方が多く来院され、特に鼠径部(股関節の付け根)に痛みを感じる方が多数います。
そのような場合はレントゲン撮影をし、必要に応じてMRI検査を行い、確定診断をつけます。

今回は、当院:鬼頭先生(理学療法士)の論文を紹介します(1)。
結論から言うと鼠径部に痛みがある場合、レントゲン画像に悪いところがあまりなくても、MRIでは股関節の水腫(関節に水が溜まる)や骨への負担が認められる場合が多い、とのことです。

それでは!

《対象》
・鼠径部に痛みがある
・レントゲン&MRI検査をした30名

※レントゲン(関節の状態により)
・前期…ほぼ正常
・初期…関節の間が少し狭まっている
・進行期…初期より狭まっている
・末期…進行期より狭まっている
進行期・末期→「骨棘(異常な骨組織)」や「骨嚢胞(骨の空洞)」ができたりする。

※MRI…関節内の大腿骨頭臼蓋に「骨髄浮腫(骨髄に炎症が起き腫れている状態)」や「関節水腫(関節に水が溜まること)」が認められるかを確認。

《結果》
・初期の股関節症→関節水腫あり:40%
→骨髄浮腫と関節水腫両方:33%

股関節症の初期でも
・レントゲン…関節の軟骨が少し減っている(進行期、末期と比べると軽症)
・MRI …約70%に骨髄浮腫や関節水腫が認められた。

《まとめ》
関節内に水が溜まっていたり、骨の中に炎症がある 状態で生活していると、痛みが増したり変形が進んだりすることがあります。
今回の研究から言えるのは、レントゲンでは軽症な状態でも「鼠径部に痛み」があったら、MRI を撮って関節内の状況を詳しく診たほうが良い、ということです。

「痛いのは筋力がなくなったから、歩かなくなったから」という自己判断で、痛みを堪え無理して筋力トレーニングやウォーキングを行った結果、症状が悪化してしまい受診する、というケースも少なくありません。
関節内や骨に炎症がある場合、無理なトレーニングリハビリをしてしまうと逆効果になることがあります。関節内の状態をしっかり把握してから、治療を進めていくことが大切です(^_^)
皆様お気を付けください♫

引用

(1) 鬼頭ら. 鼠径部痛を有する変形性股関節症患者の異なる病期でのMRI所見の比較. 臨床整形外科 第55巻 第10号 2020年

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