新しい本のご紹介: 腰痛は、自力で治せる!中央広論新社

このたび、私も執筆に参加した書籍が出版されました。
腰痛で悩んでいる方へ向けて、13名の専門家がそれぞれの視点から書き下ろした内容になっています。

私も13名の一人としては、臨床現場で日々患者さんと向き合う立場から、腰痛の原因や改善のポイントを解説しました。

この本には、

  • 姿勢やクセ、生活習慣を見直すことで腰痛を改善できるヒント

  • 手術や薬に頼らないセルフケアの方法

  • 医学的根拠に基づいた、すぐに実践できるアドバイス

が、ぎゅっと詰まっています。

「腰痛」でお困りな方ぜひ一度お手に取っていただければと思います。

**当院の受付でも見本が置いてあります。ぜひご覧ください。

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年齢と歩行スピードの関係 〜体の柔らかさがカギ?〜

こんにちは、西川整形外科の理学療法士の杉浦です。
今日は「高齢になると歩行スピードが落ちるのはなぜ?」というテーマの研究をご紹介します。


背景

年齢を重ねると、多くの方が「歩くスピードが遅くなった」「歩幅が小さくなった」と感じます。
この歩行スピードの低下は、転倒や生活機能の低下につながる大きな問題です。

これまでの研究では、

  • 股関節の伸展(足を後ろに伸ばす動き)

  • 足首の背屈(つま先を持ち上げる動き)

  • 体幹の回旋(体をひねる動き)

これらが制限されると、歩行スピードが落ちることが指摘されてきました。

しかし、年齢によって体幹や下肢の動きの制限がどのくらい歩行に影響しているのか? という点は、まだ十分に明らかになっていませんでした。


方法

この研究では、40〜80歳の男女を対象に調査を行いました。

  • 対象者数:120名(論文内の実際の数字に基づく)

  • 評価項目

    • 歩行スピード

    • 股関節の伸展角度

    • 足首の背屈角度

    • 体幹の回旋可動域

参加者を年齢ごとに分けて、これらの動きと歩行スピードとの関連を分析しました。


 結果

分析の結果、次のようなことが分かりました。

  1. 年齢が高くなると歩行スピードは有意に低下する
    → 特に70歳以降で顕著にみられました。

  2. 股関節の伸展角度が小さい人ほど歩行スピードが遅い
    → 歩幅が小さくなる原因。

  3. 足首の背屈制限が強い人も歩行スピードが遅い
    → 地面をしっかり蹴れなくなる。

  4. 体幹の回旋制限も影響
    → 上半身のしなやかさが歩行効率に関わる。

つまり「柔軟性の低下」がそのまま「歩行スピードの低下」につながっている、ということが明確になりました。


💡 考察

この研究が教えてくれるのは、
「年齢だから仕方ない」ではなく、体幹や下肢の柔軟性を維持することで歩行スピードの低下を防げる ということです。

特にポイントとなるのは、

  • 股関節の伸展(もも前ストレッチや股関節伸ばし)

  • 足首の背屈(アキレス腱ストレッチ)

  • 体幹の回旋(ひねり運動)

これらを日常的に取り入れることで、加齢による歩行機能の低下を遅らせられる可能性があります。


まとめ

  • 年齢とともに歩行スピードは低下する

  • その背景には 股関節・足首・体幹の柔軟性低下 がある

  • ストレッチや柔軟運動で、予防や改善が期待できる

日々の小さな積み重ねが、将来の「転ばない体」「歩ける体」を作ります。リハビリで改善していきましょう^^

参考文献

  • Li XX, et al. Association between trunk/lower extremity range of motion and walking speed in different age groups. BMC Musculoskeletal Disorders. 2023;23:6301.

立ち上がりテストでわかる“隠れ腰の不安定性”のお話

こんにちは、理学療法士の杉浦です。
今日は、腰の「隠れた不安定性」を見つけるヒントになる、ちょっと面白い研究をご紹介します。


立ち上がりテストって何?

「5回立ち上がりテスト(5R-STS)」という検査があります。
肘掛けのない椅子に座って、腕を胸の前で組んだまま、できるだけ速く立ち上がって座る動作を5回繰り返すだけ。
時間が22秒以上かかると「腰や脚の機能がかなり落ちている」サインになります。


座っていると腰は不安定になりやすい?

研究によると、変性腰椎すべり症(腰の骨が少し前にずれる状態)の人を調べたところ、
このテストで遅かったグループは座った姿勢のときに骨のずれが一番大きく、後ろに丸まりやすいという特徴がありました。

さらに面白いのが、座位のX線写真と仰向けのMRIを比べると、不安定性がよく見えるということ。
立ったまま前屈・後屈を撮るよりも、座って荷重がかかった状態と、仰向けで力が抜けた状態の差を比べる方が、腰のぐらつきがはっきりするんですね。


日常生活での注意ポイント

  • 荷物を持ったまま長く座ると、不安定な腰には負担がかかります。

  • 「立ち上がるのが遅い」「腰がグラっとする」感じがある場合は、腰の安定性を高める運動が必要かもしれません。

  • 柔軟性も大事ですが、筋肉でしっかりコントロールしながら動かす柔らかさが、腰痛予防にはもっと大事です。


引用文献

Wang K, Wang S, He D, Xu L, Wang H, Ma T, Zhou Q, Lv F, Wang Y.
Radiographic evaluation of 5-repetition sit-to-stand test-induced low back pain in degenerative lumbar spondylolisthesis: identifying segmental instability.
BMC Musculoskelet Disord. 2022;23:912. doi:10.1186/s12891-022-05761-0

腰を横に倒すとき、腰にはどんな力がかかっている?

連休はあいにくの雨でしたね。。。。色々研究などは進みましたが外では遊べませんでした。。。
今回も面白い研究があって、患者さんにも役に立つ内容だと思います!

腰を横に曲げる「側屈」という動き。
日常生活でもよくやりますよね。
洗濯物を取るとき、棚の下のものを取るとき、スポーツでもよくあります。

カナダの研究で、この動きをしているときに腰の中で何が起きているかを調べた結果があります。


実験でわかったこと

  • 腰には上から押しつける力(圧縮)がかかります。
    20kgくらいの荷物を持って横に曲げると、腰には約270kg分の力がかかります。

  • ずらす力(せん断力)もかかります。
    横に曲げた方向によって、このずれる力の向きも変わります。

  • 腰の靱帯は、曲げの中間ではあまり働きませんが、限界近くまで曲げると一気に引っ張られます。

  • 筋肉がしっかり働いているときは靱帯の負担が減ります。逆に筋肉が働いていないと、靱帯に負担が集中します。


腰を守るためのポイント

  1. 限界まで倒さない
    荷物を持ったまま終わりまで横に倒すと靱帯に強い負担がかかります。

  2. ゆっくり、コントロールして動く
    急に倒すと筋肉や靱帯に大きな力がかかります。

  3. 左右バランスよく使う
    いつも同じ方向だけ曲げると、片方の関節や椎間板に負担が集中します。

  4. 筋肉を使いながらの柔軟性
    柔らかさだけでなく、筋肉がしっかり働いてコントロールしながら動く柔軟性が、腰痛予防には大切です。


まとめ

腰は、横に曲げるときに思ったより大きな力を受けています。
これは側屈だけでなく、前屈や伸展の動きでも同じようなことが起こります
特に荷物を持って動くときは、中間くらいの角度で動く、左右・前後バランスよく使う、ゆっくり動くことがポイントです。
そして、柔らかくするだけでなく、筋肉を働かせながら動かせる柔軟性が、腰痛を防ぐためのカギになります。

日常生活や運動のとき、ぜひ気をつけましょう。

引用文献
McGill, S. M. (1992). A myoelectrically based dynamic three-dimensional model to predict loads on lumbar spine tissues during lateral bending. Journal of Biomechanics, 25(4), 395–414. https://doi.org/10.1016/0021-9290(92)90001-U

若い人でも腰痛になる?原因はいろいろ

「腰痛って年を取ってからなるものじゃないの?」
そう思っている方も多いですが、実は10代でも腰痛は珍しくありません。

今回は、アメリカの整形外科で3年間にわたって調べた、10〜19歳の腰痛の原因についてのお話です。


どんな調査?

  • 対象は10〜19歳で腰痛を訴えて受診した1932人

  • 男性922人、女性1010人

  • 診断はカルテと必要に応じた画像検査(レントゲン、MRI、CT)で確認

  • アメリカの医療事情では、日本よりMRI検査の実施率は低め


若い人の腰痛、原因ランキング

  1. 原因が特定できない腰痛(非特異的腰痛)
    → 全体の約43%
    → 痛みはあるけれど、画像検査でもはっきり原因が見つからないタイプ
    → MRI検査をしていない症例も多く、この割合は日本より高めに出やすい

  2. 椎間板のトラブル(椎間板疾患)
    → 約28%
    → ヘルニアや椎間板の変性など。女性に多い傾向
    → 実際にはMRIを撮ればもっと見つかる可能性あり

  3. 腰の骨の疲労骨折(脊椎分離症)
    → 約15%
    → 男性に多く、スポーツによる反復的な腰の反らし・ひねり動作が関係
    → 日本の現場感覚では、もう少し割合が高い印象


現場で感じること

私たちが日本で日々診ていると、

  • MRIで詳しく調べると、椎間板の障害や分離症が原因になっているケースはもっと多い

  • 特にスポーツをしている学生は、腰痛の裏に疲労骨折や椎間板損傷が隠れていることが少なくない

アメリカのこの研究は大規模ですが、検査方法の違いを考えると、日本で同じ調査をしたら結果は少し変わるはずです。


患者さんへのメッセージ

  • 「成長期だからそのうち治る」と放っておくのは危険

  • 長引く腰痛や、夜間痛・しびれ・発熱を伴う場合は早めの受診を

  • スポーツをしている方は、腰の反らし・ひねり動作の多い練習やフォームに注意

  • 早めに原因を特定して、適切なトレーニングや休養を取ることが再発予防につながります


💡 まとめ
若い人の腰痛は、筋肉疲労だけでなく、椎間板や骨のトラブルが隠れていることもあります。
日本の現場では、MRI検査を活用すればもっと原因がはっきりするケースが多い印象です。
「若いから大丈夫」ではなく、「若くても腰痛はありえる」と知ることが、早期対応と予防につながります。

引用文献

Causes of Adolescent Low Back Pain: ARetrospective Study

Imana Rhoden et al

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40678277/

重い物を持つと腰はどう変わる?〜腰の動きは硬くなるようです〜

重い物を持つと腰はどう変わる?〜腰の“硬さ”の秘密〜

普段の生活で、私たちの腰は筋肉の力で姿勢や動きを支えています。
でも、重い物を持ち上げたり、ぐっと踏ん張ったとき、腰の中では何が起きているかご存じでしょうか?


腰の中の“支え”は筋肉だけじゃない

腰には筋肉のほかに、骨や椎間板、靭帯など、動かない(受動的な)部品があります。
軽い動きでは筋肉がメインで支えますが、重い力がかかると、この受動的な部品も加わって腰を守ります。


重い荷物を持つと腰は“硬くなる”

研究では、腰の骨(腰椎)の間に強い押しつけ力をかけたとき、動きにくく(硬く)なることがわかっています。

  • 中くらいの力(人の体重2人分くらい)で腰の動きは約2〜6倍硬くなる

  • とても大きな力(約450kg相当)では、横ずれの動きはほとんど出なくなる

つまり、重い物を持つと腰はガッチリ固まってしまうんです。


なぜ硬くなるの?

  1. 骨の後ろ側の関節がぶつかる
    → 動きを止めるストッパーのような役割

  2. 椎間板がつぶれて形が変わる
    → クッションが膨らんで動きを制限

どちらも「腰を守る仕組み」ですが、同時に関節や椎間板への負担も増えます。


日常生活で気をつけたいこと

  • 重い物を持ち上げるときは、腰だけでなく足や全身を使う

  • 長時間の中腰や、ねじった状態での作業を避ける

  • 腰を守るための筋力と柔軟性のバランスを意識する


まとめ

重い荷物を持つとき、腰は自分で硬くなって支える「守りモード」に入ります。
これは良い面もありますが、同時に腰の関節や椎間板に負担が集中します。

日常生活や仕事で腰に大きな力がかかる場面では、この「硬くなる腰」を知って、無理のない動き方を心がけてください。

引用文献です

J. Janevicet al.

Large Compressive Preloads Decrease Lumbar Motion Segment Flexibility

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/1992073/