新しい本のご紹介: 腰痛は、自力で治せる!中央広論新社

このたび、私も執筆に参加した書籍が出版されました。
腰痛で悩んでいる方へ向けて、13名の専門家がそれぞれの視点から書き下ろした内容になっています。

私も13名の一人としては、臨床現場で日々患者さんと向き合う立場から、腰痛の原因や改善のポイントを解説しました。

この本には、

  • 姿勢やクセ、生活習慣を見直すことで腰痛を改善できるヒント

  • 手術や薬に頼らないセルフケアの方法

  • 医学的根拠に基づいた、すぐに実践できるアドバイス

が、ぎゅっと詰まっています。

「腰痛」でお困りな方ぜひ一度お手に取っていただければと思います。

**当院の受付でも見本が置いてあります。ぜひご覧ください。

Amazon URLリンク:https://amzn.to/3V2GnZY

年齢と歩行スピードの関係 〜体の柔らかさがカギ?〜

こんにちは、西川整形外科の理学療法士の杉浦です。
今日は「高齢になると歩行スピードが落ちるのはなぜ?」というテーマの研究をご紹介します。


背景

年齢を重ねると、多くの方が「歩くスピードが遅くなった」「歩幅が小さくなった」と感じます。
この歩行スピードの低下は、転倒や生活機能の低下につながる大きな問題です。

これまでの研究では、

  • 股関節の伸展(足を後ろに伸ばす動き)

  • 足首の背屈(つま先を持ち上げる動き)

  • 体幹の回旋(体をひねる動き)

これらが制限されると、歩行スピードが落ちることが指摘されてきました。

しかし、年齢によって体幹や下肢の動きの制限がどのくらい歩行に影響しているのか? という点は、まだ十分に明らかになっていませんでした。


方法

この研究では、40〜80歳の男女を対象に調査を行いました。

  • 対象者数:120名(論文内の実際の数字に基づく)

  • 評価項目

    • 歩行スピード

    • 股関節の伸展角度

    • 足首の背屈角度

    • 体幹の回旋可動域

参加者を年齢ごとに分けて、これらの動きと歩行スピードとの関連を分析しました。


 結果

分析の結果、次のようなことが分かりました。

  1. 年齢が高くなると歩行スピードは有意に低下する
    → 特に70歳以降で顕著にみられました。

  2. 股関節の伸展角度が小さい人ほど歩行スピードが遅い
    → 歩幅が小さくなる原因。

  3. 足首の背屈制限が強い人も歩行スピードが遅い
    → 地面をしっかり蹴れなくなる。

  4. 体幹の回旋制限も影響
    → 上半身のしなやかさが歩行効率に関わる。

つまり「柔軟性の低下」がそのまま「歩行スピードの低下」につながっている、ということが明確になりました。


💡 考察

この研究が教えてくれるのは、
「年齢だから仕方ない」ではなく、体幹や下肢の柔軟性を維持することで歩行スピードの低下を防げる ということです。

特にポイントとなるのは、

  • 股関節の伸展(もも前ストレッチや股関節伸ばし)

  • 足首の背屈(アキレス腱ストレッチ)

  • 体幹の回旋(ひねり運動)

これらを日常的に取り入れることで、加齢による歩行機能の低下を遅らせられる可能性があります。


まとめ

  • 年齢とともに歩行スピードは低下する

  • その背景には 股関節・足首・体幹の柔軟性低下 がある

  • ストレッチや柔軟運動で、予防や改善が期待できる

日々の小さな積み重ねが、将来の「転ばない体」「歩ける体」を作ります。リハビリで改善していきましょう^^

参考文献

  • Li XX, et al. Association between trunk/lower extremity range of motion and walking speed in different age groups. BMC Musculoskeletal Disorders. 2023;23:6301.

立ち上がりテストでわかる“隠れ腰の不安定性”のお話

こんにちは、理学療法士の杉浦です。
今日は、腰の「隠れた不安定性」を見つけるヒントになる、ちょっと面白い研究をご紹介します。


立ち上がりテストって何?

「5回立ち上がりテスト(5R-STS)」という検査があります。
肘掛けのない椅子に座って、腕を胸の前で組んだまま、できるだけ速く立ち上がって座る動作を5回繰り返すだけ。
時間が22秒以上かかると「腰や脚の機能がかなり落ちている」サインになります。


座っていると腰は不安定になりやすい?

研究によると、変性腰椎すべり症(腰の骨が少し前にずれる状態)の人を調べたところ、
このテストで遅かったグループは座った姿勢のときに骨のずれが一番大きく、後ろに丸まりやすいという特徴がありました。

さらに面白いのが、座位のX線写真と仰向けのMRIを比べると、不安定性がよく見えるということ。
立ったまま前屈・後屈を撮るよりも、座って荷重がかかった状態と、仰向けで力が抜けた状態の差を比べる方が、腰のぐらつきがはっきりするんですね。


日常生活での注意ポイント

  • 荷物を持ったまま長く座ると、不安定な腰には負担がかかります。

  • 「立ち上がるのが遅い」「腰がグラっとする」感じがある場合は、腰の安定性を高める運動が必要かもしれません。

  • 柔軟性も大事ですが、筋肉でしっかりコントロールしながら動かす柔らかさが、腰痛予防にはもっと大事です。


引用文献

Wang K, Wang S, He D, Xu L, Wang H, Ma T, Zhou Q, Lv F, Wang Y.
Radiographic evaluation of 5-repetition sit-to-stand test-induced low back pain in degenerative lumbar spondylolisthesis: identifying segmental instability.
BMC Musculoskelet Disord. 2022;23:912. doi:10.1186/s12891-022-05761-0

腰を横に倒すとき、腰にはどんな力がかかっている?

連休はあいにくの雨でしたね。。。。色々研究などは進みましたが外では遊べませんでした。。。
今回も面白い研究があって、患者さんにも役に立つ内容だと思います!

腰を横に曲げる「側屈」という動き。
日常生活でもよくやりますよね。
洗濯物を取るとき、棚の下のものを取るとき、スポーツでもよくあります。

カナダの研究で、この動きをしているときに腰の中で何が起きているかを調べた結果があります。


実験でわかったこと

  • 腰には上から押しつける力(圧縮)がかかります。
    20kgくらいの荷物を持って横に曲げると、腰には約270kg分の力がかかります。

  • ずらす力(せん断力)もかかります。
    横に曲げた方向によって、このずれる力の向きも変わります。

  • 腰の靱帯は、曲げの中間ではあまり働きませんが、限界近くまで曲げると一気に引っ張られます。

  • 筋肉がしっかり働いているときは靱帯の負担が減ります。逆に筋肉が働いていないと、靱帯に負担が集中します。


腰を守るためのポイント

  1. 限界まで倒さない
    荷物を持ったまま終わりまで横に倒すと靱帯に強い負担がかかります。

  2. ゆっくり、コントロールして動く
    急に倒すと筋肉や靱帯に大きな力がかかります。

  3. 左右バランスよく使う
    いつも同じ方向だけ曲げると、片方の関節や椎間板に負担が集中します。

  4. 筋肉を使いながらの柔軟性
    柔らかさだけでなく、筋肉がしっかり働いてコントロールしながら動く柔軟性が、腰痛予防には大切です。


まとめ

腰は、横に曲げるときに思ったより大きな力を受けています。
これは側屈だけでなく、前屈や伸展の動きでも同じようなことが起こります
特に荷物を持って動くときは、中間くらいの角度で動く、左右・前後バランスよく使う、ゆっくり動くことがポイントです。
そして、柔らかくするだけでなく、筋肉を働かせながら動かせる柔軟性が、腰痛を防ぐためのカギになります。

日常生活や運動のとき、ぜひ気をつけましょう。

引用文献
McGill, S. M. (1992). A myoelectrically based dynamic three-dimensional model to predict loads on lumbar spine tissues during lateral bending. Journal of Biomechanics, 25(4), 395–414. https://doi.org/10.1016/0021-9290(92)90001-U

若い人でも腰痛になる?原因はいろいろ

「腰痛って年を取ってからなるものじゃないの?」
そう思っている方も多いですが、実は10代でも腰痛は珍しくありません。

今回は、アメリカの整形外科で3年間にわたって調べた、10〜19歳の腰痛の原因についてのお話です。


どんな調査?

  • 対象は10〜19歳で腰痛を訴えて受診した1932人

  • 男性922人、女性1010人

  • 診断はカルテと必要に応じた画像検査(レントゲン、MRI、CT)で確認

  • アメリカの医療事情では、日本よりMRI検査の実施率は低め


若い人の腰痛、原因ランキング

  1. 原因が特定できない腰痛(非特異的腰痛)
    → 全体の約43%
    → 痛みはあるけれど、画像検査でもはっきり原因が見つからないタイプ
    → MRI検査をしていない症例も多く、この割合は日本より高めに出やすい

  2. 椎間板のトラブル(椎間板疾患)
    → 約28%
    → ヘルニアや椎間板の変性など。女性に多い傾向
    → 実際にはMRIを撮ればもっと見つかる可能性あり

  3. 腰の骨の疲労骨折(脊椎分離症)
    → 約15%
    → 男性に多く、スポーツによる反復的な腰の反らし・ひねり動作が関係
    → 日本の現場感覚では、もう少し割合が高い印象


現場で感じること

私たちが日本で日々診ていると、

  • MRIで詳しく調べると、椎間板の障害や分離症が原因になっているケースはもっと多い

  • 特にスポーツをしている学生は、腰痛の裏に疲労骨折や椎間板損傷が隠れていることが少なくない

アメリカのこの研究は大規模ですが、検査方法の違いを考えると、日本で同じ調査をしたら結果は少し変わるはずです。


患者さんへのメッセージ

  • 「成長期だからそのうち治る」と放っておくのは危険

  • 長引く腰痛や、夜間痛・しびれ・発熱を伴う場合は早めの受診を

  • スポーツをしている方は、腰の反らし・ひねり動作の多い練習やフォームに注意

  • 早めに原因を特定して、適切なトレーニングや休養を取ることが再発予防につながります


💡 まとめ
若い人の腰痛は、筋肉疲労だけでなく、椎間板や骨のトラブルが隠れていることもあります。
日本の現場では、MRI検査を活用すればもっと原因がはっきりするケースが多い印象です。
「若いから大丈夫」ではなく、「若くても腰痛はありえる」と知ることが、早期対応と予防につながります。

引用文献

Causes of Adolescent Low Back Pain: ARetrospective Study

Imana Rhoden et al

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40678277/

重い物を持つと腰はどう変わる?〜腰の動きは硬くなるようです〜

重い物を持つと腰はどう変わる?〜腰の“硬さ”の秘密〜

普段の生活で、私たちの腰は筋肉の力で姿勢や動きを支えています。
でも、重い物を持ち上げたり、ぐっと踏ん張ったとき、腰の中では何が起きているかご存じでしょうか?


腰の中の“支え”は筋肉だけじゃない

腰には筋肉のほかに、骨や椎間板、靭帯など、動かない(受動的な)部品があります。
軽い動きでは筋肉がメインで支えますが、重い力がかかると、この受動的な部品も加わって腰を守ります。


重い荷物を持つと腰は“硬くなる”

研究では、腰の骨(腰椎)の間に強い押しつけ力をかけたとき、動きにくく(硬く)なることがわかっています。

  • 中くらいの力(人の体重2人分くらい)で腰の動きは約2〜6倍硬くなる

  • とても大きな力(約450kg相当)では、横ずれの動きはほとんど出なくなる

つまり、重い物を持つと腰はガッチリ固まってしまうんです。


なぜ硬くなるの?

  1. 骨の後ろ側の関節がぶつかる
    → 動きを止めるストッパーのような役割

  2. 椎間板がつぶれて形が変わる
    → クッションが膨らんで動きを制限

どちらも「腰を守る仕組み」ですが、同時に関節や椎間板への負担も増えます。


日常生活で気をつけたいこと

  • 重い物を持ち上げるときは、腰だけでなく足や全身を使う

  • 長時間の中腰や、ねじった状態での作業を避ける

  • 腰を守るための筋力と柔軟性のバランスを意識する


まとめ

重い荷物を持つとき、腰は自分で硬くなって支える「守りモード」に入ります。
これは良い面もありますが、同時に腰の関節や椎間板に負担が集中します。

日常生活や仕事で腰に大きな力がかかる場面では、この「硬くなる腰」を知って、無理のない動き方を心がけてください。

引用文献です

J. Janevicet al.

Large Compressive Preloads Decrease Lumbar Motion Segment Flexibility

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/1992073/

本年もどうぞよろしくお願いいたします:去年採択された論文の紹介です

本年もどうぞよろしくお願いいたします。西川整形外科で理学療法士をしております杉浦史郎です。
今年も臨床現場、リハビリ関係の情報発信、そして研究活動頑張っていきたいです。
今年、最初の記事は、去年European Spine Journalに採択された僕たちの論文をご紹介します^^

子どもたちが元気にスポーツを続けられるように:発育期腰椎分離症の研究

子どものスポーツに関わる「発育期腰椎分離症」についてお話しします。なんだか難しそうな名前ですが、実はスポーツを頑張る子どもたちに多い腰のトラブルのことです。「うちの子には関係ないかも?」と思った方、ちょっとだけ読んでみてください。もしかすると、役立つかもしれません。


発育期腰椎分離症ってどんな症状?

簡単に言うと、腰の骨が疲労骨折を起こすことで、腰に痛みが出る症状です。特にスポーツをする子どもたちに多く見られます。でも、早く治療を始めれば治る確率が高くなります!

問題は、診断が難しいこと。病院でMRIを撮らないと分からない場合が多いんです。これでは「ちょっと腰が痛い」くらいの段階では、見過ごされてしまうこともあります。


質問票で早期発見を目指す

私たちは、病院に行かなくても発育期腰椎分離症を見つけるための「質問票」を作りました。この質問票に答えるだけで、発症のリスクがあるかどうかが分かる仕組みです。

質問の例

  • 1週間にどれくらい運動している?
  • 1日にどれくらい練習している?
  • どんな動きで腰が痛くなる?
  • 痛みの場所や広がりはどんな感じ?

こういった質問に答えることで、発育期腰椎分離症の可能性を見極められるんです。


研究で分かったポイント

質問票を使った研究の中で、次のことが分かりました:

  1. 運動量が多いほどリスクが高い
    毎日練習している子や、1日3時間以上運動している子は要注意です。
  2. 動いている時に痛むのが特徴
    座っている時や立っている時は平気でも、動くと腰が痛む場合は発育期腰椎分離症の可能性があります。
  3. 男子に多い傾向
    男の子の方が発症しやすいことが分かりました。

この研究で目指していること

私たちがこの研究で目指しているのは、子どもたちが安心してスポーツを続けられる環境を作ることです。

  • スポーツの現場や学校で質問票を使えば、早期にリスクを見つけられます。#まだこの質問紙は発展途上で引き続き追加研究しています
  • 「腰が痛い」と言いながら続けてスポーツをして子達が将来分離症になってしまうのを防ぎたい

これからの課題と未来への一歩

正直、この質問票はまだ発展途上です。もっと多くの子どもたちに協力してもらい、精度を上げていく必要があります。

引き続き今年も臨床研究を続けていき未来学会や論文で発信していきます。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました!

参考文献
Sugiura et al,. Low back pain characteristics in adolescent patients with early-stage spondylolysis: a prospective study” Euro Spine 2024
https://link.springer.com/article/10.1007/s00586-024-08478-1

深呼吸で痛みが和らぐ?!

こんにちは、西川整形外科で理学療法士をしています杉浦史郎です。
今日は「深呼吸」について、とても面白い研究を見つけたので、ご紹介します。

深呼吸って、ただ息を吸って吐くだけじゃなくて色々ないい効果があるようです^^

今回紹介するのは、深呼吸が「痛み」や「気分」にどう影響するかを調べた研究。

実験内容

研究チームは16人の被験者に、2種類の深呼吸をやってもらったんです。

1つ目は「注意深呼吸」。これは外部のペースに合わせて、外部の刺激に集中して呼吸する方法。
2つ目は「リラックス深呼吸」。これは自分のペースで、リラックスしながら呼吸する方法。

研究結果

ここからが本当に面白いです。

まず、「リラックス深呼吸」をした人たちは、痛みへの耐性が上がったんです。
逆に「注意深呼吸」をした人たちは、あまり変化がなかった。

さらに驚くべきことに、「リラックス深呼吸」をすると、交感神経の活動が下がったとのこと。
#体がリラックスモードに入るわけです

日常生活でも応用可能です^^

例えば、プレゼン前の緊張とか、締め切り前のストレスとか。
そういう時に「リラックス深呼吸」をすれば、体と心の両方をリラックスさせることができる。

でも注意していただきたいのが、「集中して呼吸しなきゃ!」って思いすぎると逆効果になること。
自然に、リラックスして呼吸するのがポイントのようです。そして整形外科に通院されている方は何かしらの痛みも抱えていらっしゃるので、「深呼吸」を行うと痛みも楽になるのではないでしょうか。もちろん他の治療も続けながらですが。

最後に

『深呼吸』は誰でもできる呼吸法ですが、現代社会で忙しい中にいるとついつい呼吸が浅くなってしまいます。自分もこの記事を気づくと鼻からフンフンしながら書いてました。。。「深呼吸」してみます。。。

The Effect of Deep and Slow Breathing on Pain Perception, Autonomic Activity, and Mood Processing—An Experimental Studypme_1243 215..228
Volker Busch, MD,* Walter Magerl, MD,† Uwe Kern, MD,‡ Joachim Haas, MD,* Göran Hajak, MD,* and Peter Eichhammer, MD*
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21939499/

 

コルセットをしても腰や背中の筋力は落ちないという論文がありました^^

思春期側弯症の治療でつける装具で筋力は落ちないようです^^

こんにちは、西川整形外科の理学療法士の杉浦史郎です。最近当院でまた卓球が盛り上がっています^^一番ラケット握ってます^^

皆さん、「側弯症(そくわんしょう)」ってご存じですか?これは背骨が横に曲がってしまう状態のことで、特に思春期の女の子に多いんです。

そして、その治療でよく使われるのが「硬性装具」という、背中を支えるコルセットです。でも、これをつけると「背中の筋肉が弱くなるんじゃないの?」なんて不安を感じている方も多いと思います。当院では発育期腰椎分離症(腰の疲労骨折)の方が、腰部だけの硬性コルセットをつけます。我々のデータでは3か月程度の硬性コルセットの後の背筋の筋肉の断面積は変わりありませんでした、すなわち硬性コルセットを使用しても筋肉は小さくならない結果でした。しかし実際の背筋の筋力や持久力はみていないのでどうかな?って思っていましたが、病名は違いますが側弯症で硬性装具後の筋力をチェックした研究がありましたのでご紹介します^^


「装具を6か月つけたら筋力や持久力はどうなるのか?」を調べてみた

この研究では、側弯症の7歳から16歳の61人の女の子を対象に、次の2つのグループに分けて比較しました。

  • 装具を6か月間つけたグループ
  • 装具なしで過ごしたグループ

年齢や体型、背骨のカーブの具合(Cobb角って言います)などが似ている子たちを選んで、公平に調べたんです。


具体的にどうやって調べたの?

筋力や持久力を測るために、いろんなテストをしました。

  • 例えば「うつ伏せ」で背中を持ち上げるテスト(改良版Biering-Sorensenテスト)とか、
  • 「立った状態」でどれだけ背中の筋肉を使えるかを測るテストとか。

さらに、「1日何時間くらい装具をつけていたのか」も記録して、細かくデータを集めたんです。


結果はどうだった?

結果、こんなことが分かりました。

  • 装具を6か月つけても、背中の筋力や持久力にはほとんど影響がない!
  • 装具を長くつけた子も、つけてない子と筋力の差はなかった!

つまり、「装具をつけたら筋肉が弱くなるかも…」という心配は必要なさそうだ、という結論です。


装具は敵じゃない。優秀な仲間!

側弯症の場合、装具治療は、背骨の曲がりを進行させないためにすごく大事な役割を果たします。でも、それを理由に「筋力が落ちちゃうかも…」と装具を敬遠してしまう患者さんもいると思います(装具療法は側弯症治療なので整形外科の医師の先生の指示に従ってくださいね)。

今回の研究で分かったのは、「装具は筋肉に悪影響を与えない」ということでした。これは当院でも使用している硬性コルセットにも当てはまるのではないかと思っています。

もしお子さんやご自身が側弯症で装具治療をしているなら、「筋力が落ちるんじゃないか?」と心配しすぎず、治療に専念してもらえればと思います。そして何より、体の不調や心配事は、専門の先生に相談してください。
発育期腰椎分離症でも実際の背筋力が落ちるかなどの報告があればまたご紹介します。でも今回の結果は、病気は違えど一つ我々にとってもポジティブな結果で安心しました^^

参考文献

Pikulska et al. Back muscle function in adolescent girls treated with a rigid brace for idiopathic scoliosis: no impact of 6-month brace wear on muscle strength or endurance
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34190081/

 

 

2025年9月12日(金)、13日(土)日本スポーツ整形外科学会学術集会が開催されます

こんにちは、西川整形外科の杉浦史郎です^^今日は来年に開催される日本スポーツ整形外科学会学術集会のお知らせです!

なんと東京で開催されます。学会長は菅谷 啓之(医療法人社団TSOC理事長 東京スポーツ&整形外科クリニック)先生です。有名な先生でご存知の方も

多いと思います。菅谷先生の病院の副院長で理学療法士の高村 隆先生がいらっしゃいます。菅谷先生、高村先生にはいつも大変お世話になっております。このたび、私も学会の委員として参加させていただきます。医師の先生方、理学療法士やトレーナーの先生方、双方にとって魅力的なプログラムを考えたいと思っています。ぜひ来年の9月に学会場でお会いしましょう。ホテルも早めに取らないと満室になってしまいますので、参加予定の先生方はお早めにホテルの予約もお願いします。

 

テニスで健康寿命が延びる?!

こんにちは、西川整形外科の杉浦史郎です^^先週、職場の先輩方とテニスをしたのですが

それはそれは楽しい時間でした.

そういえば、以前テニスと健康寿命についての論文があったことを思い出し記事にしました〜

テニスは単なるスポーツではない

テニスは、身体と心に多くの利点をもたらす素晴らしい運動です。研究によると、このスポーツは健康寿命の延長に大きく貢献する可能性があります。以下に提示します^^

健康への具体的な効果

  1. 心血管系の健康改善 定期的なテニスは、心臓の健康を促進し、心血管疾患のリスクを低減します。
  2. 身体組成の改善 骨密度の向上、体脂肪率の低下、筋力の増加など、総合的な身体能力を高めます。

驚くべき長寿効果

興味深いことに、テニスは他のスポーツと比較して、驚くべき9.7年もの寿命延長効果があるとされています。特に、社交的な要素を含むスポーツは、単なる運動以上の価値があるようです。9.7年は驚きですね、サプリとか飲むよりテニスの方がいいかもしれません。。。

高齢者にとっての意義

年齢に関わらず、テニスは生活の質を向上させる可能性があります:

  • 身体的健康の維持
  • 心理的well-beingの向上
  • 社会的つながりの強化

今後の研究への期待

まだ解明されていない部分も多いため、長期的な研究が必要です。テニスの独自の健康効果をさらに詳しく理解するための研究が待たれます。

まとめ

テニスは、健康寿命を延ばすための素晴らしい選択肢の一つのようです。確かに患者さんでテニスをしている方は、若い方からご高齢の方まで多くいらっしゃいます。しかしやはりスポーツなので怪我のリスクもあります。怪我を予防しながらテニスを続けれれたら健康な人生を送れると思います!!僕も来月またテニスします^^それでは。

参考文献

  1. Spring, K., Holmes, M., & Smith, J. (2020). Long-term Tennis Participation and Health Outcomes: An Investigation of “Lifetime” Activities.. International journal of exercise science, 13 7, 1251-1261 . https://doi.org/10.70252/baht9366.
  2. Marks, B. (2006). Health benefits for veteran (senior) tennis players. British Journal of Sports Medicine, 40, 469 – 476. https://doi.org/10.1136/bjsm.2005.024877.
  3. Pluim, B., Groppel, J., Miley, D., Crespo, M., & Turner, M. (2017). Health benefits of tennis. British Journal of Sports Medicine, 52, 201 – 202. https://doi.org/10.1136/bjsports-2017-098623.
  4. Schnohr, P., O’Keefe, J., Holtermann, A., Lavie, C., Lange, P., Jensen, G., & Marott, J. (2018). Various Leisure‐Time Physical Activities Associated With Widely Divergent Life Expectancies: The Copenhagen City Heart Study. Mayo Clinic Proceedings, 93, 1775–1785. https://doi.org/10.1016/j.mayocp.2018.06.025.

 

ダッシュも発育期腰椎分離症の原因になる?!

こんにちは、西川整形外科の杉浦史郎です^^今日は勢いがあり2本目の投稿です!

今日は、「ダッシュ(全力疾走)」が発育期腰椎分離症(腰の疲労骨折)にどう関わるのか――そんな、スポーツを頑張る人には見逃せないお話をしていきます。

腰椎分離症というと、よく知られている原因は野球のピッチングやサッカーのシュート、バレーボールのスパイクなど。でも最近、「陸上競技選手にも多いんだけど、ダッシュも原因になってるんじゃない?」という視点が注目されているんです。

そして今回、その疑問にズバッと切り込んだ研究が発表されました!実は、今回の論文の著者 後藤先生(徳島文理大学)は学会や研究会でいつも会うお友達です!!


ダッシュって、そんなに腰に負担かかるの?

この研究では、サッカー選手17名を対象にダッシュやジョグ、シュート、パスといった動作を3Dで徹底解析しました。「何となく腰に悪そう」じゃなくて、データをとって集めたわけです。

結果、これが面白いんです^^

ダッシュのときの股関節の伸展角度や背骨(脊柱)の回旋角度、股関節への力のかかり方(屈曲モーメント)が、なんとシュート動作と似ていることが判明!

つまり、シュートが腰に負担をかけるなら、ダッシュも同じくらいヤバいんじゃないの?という話になってきたんです。


じゃあ、どうしましょう?

この発見がどれくらい大事かというと、「スポーツを頑張る人の未来のリスクを減らせるかもしれない」くらい重要です。だって、ダッシュが原因なら、陸上競技や他の全力疾走を含むスポーツをする人たちもリスクが高いことになりますよね。サッカー選手だってシュート練習はするけどほとんどダッシュしてますし。

でも、心配するだけじゃなくて、対策もちゃんと考えられます!例えば:

  • 腰への負担を減らすフォームの改善
  • 股関節や体幹の柔軟性や鍛えるトレーニング
  • 無理しすぎない練習スケジュールを組む

こんなふうに工夫すれば、ダッシュを続けながらも腰椎分離症のリスクを下げられるはずです。あとは練習時間やスプリントの練習時間もある程度制限できればとてもいいと思います。


スポーツ選手の未来を守るために

この研究で重要なのは、野球ですとピッチングやバッティング、サッカーですとキック動作が腰に負担と考えられていましたが、スポーツに共通する「ダッシュ」も腰に負担がかかるということです。スポーツ選手みんなに腰痛のリスクがある状態です。

ぜひリハビリテーションで腰に負担がかからない「走り」を獲得してください!!

**過去にも後藤先生の同じ論文で記事を書いています。今日勉強していて改めて重要と思い再度記事にしました^^

 

参考文献

Dash-Associated Spondylolysis Hypothesis

Tsuyoshi Goto1), Toshinori Sakai2), Kosuke Sugiura2), Hiroaki Manabe2), Masatoshi Morimoto2), Fumitake Tezuka2), Kazuta Yamashita2), Yoichiro Takata2), Takashi Chikawa2), Shinsuke Katoh1) and Koichi Sairyo2)

1) Department of Rehabilitation, Tokushima University Hospital, Tokushima, Japan
2) Department of Orthopedics, Institute of Biomedical Sciences, Tokushima University Graduate School, Tokushima, Japan

https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6690085/ **オープンアクセスなので論文をフルテキストで見れます!!

腰痛の方必見!マッサージ療法がどれだけ効くのか?

「腰痛の方、必見!マッサージ療法がどれだけ効くのか?」

こんにちは、西川整形外科の杉浦史郎です^^すごい寒くなったので、この前のブログで投稿した温熱の効果の論文を応用し、熱線ベストを購入しました^^
#水曜日に届くのでよければレポートします

今日は「マッサージ療法って本当に腰痛に効くの?」という、みんなが気になるテーマについてお話ししたいと思います。

腰が痛いとき、「マッサージ」を受けた方、多いと思います。でも、実際どれくらい効果があるのか、科学的な視点で検証した研究は少ないんです。そこで登場するのが、今回紹介する論文は、腰痛に対するマッサージ療法の効果を徹底的に調べたものなんですよ。


どんな研究が行われたの?

まず、このレビューでは**2008年5月までのランダム化比較試験(RCT)**を総ざらいしています。具体的には、MEDLINEやEMBASEといったデータベースからデータを引っ張り、全部で13件、1596名分のデータを解析しています。つまり、たくさんの研究をまとめて分析したわけですね。

で、何を比べたのかというと、

  • マッサージ vs. プラセボ(偽物の治療)
  • マッサージ vs. 他の治療法(運動療法、リラクゼーションなど)

「マッサージって本当に効くの?」をデータで見える化したわけです。


結果はどうだったの?

結論から言うと、マッサージ療法は腰痛に効果的である可能性が高い! 特に効果が大きかったのは、以下のケースでした:

  1. 亜急性期(症状が数週間続いている状態)や慢性期(3か月以上続く腰痛)
    → 痛みが軽減し、機能改善にも効果があったとのこと。
  2. 運動療法や教育プログラムとの併用
    → これが最強の組み合わせ。単体でやるより相乗効果が期待できるみたいです。

とはいえ、課題もある

もちろん、良い話ばかりではありません。このレビューではいくつかの課題も挙げられています:

  • コスト効果の検討
    マッサージを長期間続けると、どれくらいコストパフォーマンスがいいのか、まだよく分かっていません。
  • いろんな手法の比較不足
    マッサージの中にも「もみほぐし」「タイ古式」「アロマ」などたくさん種類がありますが、どれが一番効くのか、まだまだ研究の余地がありそうです。

じゃあ、どう活かせばいいの?

腰痛で悩んでいる人には、マッサージ療法を取り入れるのは十分アリだと思います。ただ、単独でやるのではなく、運動療法やリラクゼーションと組み合わせるのがポイント。これはリハビリの現場でも実感しています!

慢性腰痛の人は、専門家と相談しながら試してみてくださいね。

「マッサージは意味ない」なんて思っていた人も、これを機に運動療法やセルフマッサージを入れてみてください!

参考文献
Furlan, A., Imamura, M., Dryden, T., & Irvin, E. (2009). Massage for Low Back Pain: An Updated Systematic Review Within the Framework of the Cochrane Back Review Group. Spine, 34, 1669-1684. https://doi.org/10.1097/BRS.0b013e3181ad7bd6.

思春期アスリートに潜むリスク      仙骨疲労骨折

「思春期アスリートに潜むリスク:仙骨疲労骨折と腰椎分離症、その関係性とは?」

こんにちは、Netfllixの相撲ドラマ:サンクチュアリを見て、四股トレーニングを始めました^^
#以前は縄跳びをやっていたのですが膝が痛くなりましたので。。。 #とてもいいドラマでした

いつもブログを見ていただきありがとうございます。
今日はちょっと専門的なお話を、わかりやすく噛み砕いてお届けします。テーマは 「思春期のアスリートが抱える腰の問題」。運動好きなお子さんを持つ親御さん、コーチの皆さん、そして若いアスリート自身にぜひ知っておいていただきたい内容です。


仙骨疲労骨折と腰椎分離症――その関係性を知っていますか?

スポーツをしている思春期のアスリートたち。その影には、 「仙骨疲労骨折」「腰椎分離症」 という二つの疾患が潜んでいます。これらの疾患のうち腰椎分離症はこのブログでも沢山紹介しておりますが、今回は仙骨疲労骨折です(仙骨は腰の下の骨盤の部分です。ちょうど骨盤の真ん中の骨になります)

今回紹介する筑波大学の辰村先生の論文では、920人の高校生以下の腰痛患者さんのMR Iを検査し、13名(1.4%)が仙骨疲労骨折だっととのことです。過去の論文でも仙骨疲労骨折の発生頻度は1.6%と言われています。ものすごい多くはないのですが、注意しないといけない病気です。

また辰村先生の報告では仙骨疲労骨折と診断された13人の思春期アスリートのうち、 半数以上(7人)に腰椎分離症が合併 していました。つまり、仙骨疲労骨折がある場合、腰椎分離症も一緒に疑うべきなんです。


なぜ合併するのか?二つの疾患の共通点

仙骨疲労骨折も腰椎分離症も、根っこは同じ。「繰り返しの運動ストレス」です。

特に思春期のアスリートは、骨がまだ完全に成長しきっていないのに、激しいトレーニングを続けることで 過剰な負荷 がかかりやすい。ジャンプやランニングで、仙骨や腰椎に余計な「剪断力(骨を横にずらす力)」がかかると、疲労骨折を引き起こします。

これって、針金を何度も曲げ伸ばししているうちに、だんだん折れてしまうイメージに近いですね。


診断はどうする?腰痛の裏に潜む原因を見逃すな!

腰痛って、運動している子どもなら経験することも多いと思います。でも、普通の筋肉痛と思って放置していると危険! その腰痛や臀部痛の中に仙骨疲労骨折と腰椎分離症が潜んでいるかもしれません。

ここで頼れるのが MRI検査

  • 仙骨疲労骨折 → MRIで見ると仙骨孔周辺に「骨髄浮腫(骨の中が炎症で腫れる)」がくっきり映ります。
  • 腰椎分離症 → こちらもMRIが有効ですが、特に骨の亀裂が見える部位をしっかり確認します。

画像検査をきちんと行うことで、見逃しを防ぎましょう。診断は整形外科医に任せるとしても、親御さんや指導者の方々も「ただの腰痛じゃないかも?」と気づけると選手の疲労骨折が悪化せずにすみます。


治療と注意点:焦りは禁物!復帰は慎重に

治療は基本的に 「安静とリハビリ」 です。仙骨疲労骨折の場合、治療期間は平均67日と比較的短い(発育期腰椎分離症の場合は2−3ヶ月、それ以上の時もあります)のですが、注意すべき点が一つ。

「競技復帰後に再び折れるリスクがある」

そうなんです。別の場所や反対側の仙骨に疲労骨折が起きる可能性があります。復帰後のトレーニングでは、負荷を徐々に増やしていくことが重要です。「復帰した!イケる!」と張り切りすぎて、また痛みが出る…再発。。。は避けたいです。


まとめ:未来のアスリートを守るために

仙骨疲労骨折と腰椎分離症は、思春期のアスリートが抱えるリスクです。でも、正しい知識と適切なケアがあれば、そのリスクは最小限に抑えられます。

  • 成長期の子どもがスポーツをしていて腰痛を訴えたら、軽く見ずに整形外科医に相談を!
  • MRI検査で原因をしっかり見極める!
  • 焦らず、しっかり治してから復帰する!

スポーツ腰部障害の中で仙骨疲労骨折もあることを知っていただけると早期診断につながり選手の未来が変わると思いますのでお願いします。

参考文献
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33875705/

腰痛は腰を温めると効果的?!

温熱療法のススメ:腰痛を和らげるよくあるのあの手法とは?

こんにちは、いつもブログを読んでいただきありがとうございます^^
今日は腰痛に悩むみなさんにぜひ知ってほしい、「温熱療法」の効果についてお話しします。この方法、実は医学的にも効果が立証されているんです。


温熱療法って何?

「温熱療法」と聞いて、「え、ただ温めるだけでしょ?」と思ってしまいますし、確かにに温めるだけ…なのですが、これが腰痛に対して効果的なんです。特に注目されているのが 「温熱パック療法 **当院でも行っているお湯につけて保温した特殊のパックをタオルに巻いて患部にあてるものです」 という手法。この方法、痛みを和らげるだけでなく、筋肉の柔軟性をアップさせ、体の動きもスムーズにしてくれます。


温熱療法の主な効果

① 痛みの軽減

温熱療法は、急性腰痛の救世主!例えば、 ホットパックを使うと、痛みがじわじわと和らいでいく感覚を実感できます。さらに、ただのプラセボ(いわゆる思い込み効果)ではなく、しっかりとした科学的な根拠に基づいているので安心してください。急性腰痛でお悩みの方は、まずこれを試してみる価値があります。

② 筋肉の柔軟性&機能の改善

「朝起きたら背中がガチガチ…」なんてこと、ありませんか?温熱療法を活用すると、筋肉の硬直がほぐれて柔らかくなり、動きやすさも向上します。特に 運動療法 と組み合わせると、効果が上がります!言ってみれば、温熱療法はストレッチの効果をブーストしてくれる秘密兵器みたいなものなんです。

③ 障害の軽減

腰痛がひどいと日常生活に支障をきたしますよね。温熱療法は、その「生活のやりづらさ」すら軽くしてくれるんです。これも嬉しい効果ですよね。


どの温熱療法を選べばいいの?

温熱療法にもいろいろ種類があります。それぞれの特徴をざっくり解説します!

  1. ホットパック療法
    → 急性腰痛や亜急性腰痛にぴったり。短期間で痛みが軽減します。
  2. 温熱療法をしながらのマッサージ
    → 気持ちよくリラックスしたい人向け。自律神経や気分改善にも効果があり、ストレス解消にも最適です。
  3. 高温パルス熱療法 *これは当院にもある特殊なリハビリの機器になります
    → 慢性的な腰痛で悩んでいる人はこちら。持続的な熱療法よりも鎮痛効果が高いとされています。

まとめ:温めるだけでここまで変わる!

温熱療法は、「まずは温めるか」という気軽な方法でありながら、医学的にもしっかり裏付けが取れた優れものです。痛みの軽減、筋肉の柔軟性向上、さらには日常生活の質の向上まで、いいことずくめ!さらに、運動療法と組み合わせれば効果も上がります。

腰痛で悩んでいる皆様、温熱療法を取り入れてみてください。最近は、気温もだいぶ下がってきました。貼るホッカイロを患部にあてるのも効果的だと思いいます*低温やけどだけには気をつけてください。

それではまた次回^^

参考文献
1 Nadler, S., Steiner, D., Erasala, G., Hengehold, D., Abeln, S., & Weingand, K. (2003). Continuous low-level heatwrap therapy for treating acute nonspecific low back pain.. Archives of physical medicine and rehabilitation, 84 3, 329-34 . https://doi.org/10.1053/APMR.2003.50102.

2 French, S., Cameron, M., Walker, B., Reggars, J., & Esterman, A. (2004). Superficial heat or cold for low back pain.. The Cochrane database of systematic reviews, 1, CD004750 . https://doi.org/10.1002/14651858.CD004750.PUB2.

3 Mayer, J., Ralph, L., Look, M., Erasala, G., Verna, J., Matheson, L., & Mooney, V. (2005). Treating acute low back pain with continuous low-level heat wrap therapy and/or exercise: a randomized controlled trial.. The spine journal : official journal of the North American Spine Society, 5 4, 395-403 . https://doi.org/10.1016/J.SPINEE.2005.03.009.

4 Mayer, J., Mooney, V., Matheson, L., Erasala, G., Verna, J., Udermann, B., & Leggett, S. (2006). Continuous low-level heat wrap therapy for the prevention and early phase treatment of delayed-onset muscle soreness of the low back: a randomized controlled trial.. Archives of physical medicine and rehabilitation, 87 10, 1310-7 . https://doi.org/10.1016/J.APMR.2006.07.259.

5 Chabal, C., Dunbar, P., Painter, I., Young, D., & Chabal, D. (2020). Properties of Thermal Analgesia in a Human Chronic Low Back Pain Model. Journal of Pain Research, 13, 2083 – 2092. https://doi.org/10.2147/JPR.S260967.

 

筋肉痛があると筋力が低下する?!

マスクやダウンジャケットは、ダイエットを諦めさせてくれるアイテムじゃないかと思っています。
#顎のあたりやお腹のお肉を合法的に隠してくれる

こんにちは、いつもブログをご覧いただきありがとうございます。
今日は、筋肉痛があると筋力が下がりますって論文があったのでご紹介します。

「筋肉痛が“脳”に及ぼす影響と筋力低下の意外なメカニズム」

普段、私たちは「筋肉が痛いと力が出せない」と感じることが多いですよね。なんとなく「痛みで筋肉が壊れちゃったのかな?」と思いがちですが、実はそうじゃないかもしれない、という興味深い研究結果が発表されました。

今回の論文では、実験的に高濃度の食塩水を筋肉に注入し、筋痛を誘発させて、筋力への影響を調べたんですが、驚きの結果が出たんです。なんと、筋痛は筋肉自体にはダメージを与えていない!つまり、筋肉自体は破壊されていないのですが、筋痛があるだけでで筋力が低下していたんです。

筋痛があると、被験者は普段の筋力の75%しか発揮できませんでした。これってすごいですよね?どうやら筋痛が発生すると、高いトルクを出す能力そのものが脳の中で抑制されるみたいなんです。筋肉が直接傷んでるわけじゃないのに、脳のほうで「これ以上の力を出しちゃダメ!」とブレーキをかけてしまうようです。

筋力低下のメカニズムに関する仮説

では、どうやってこの筋力低下が引き起こされているのか? 研究ではいくつかのメカニズムが議論されています。

  • ゴルジ腱器官からの求心性入力の抑制
    ゴルジ腱器官は筋肉の張力を感知する役割を持つセンサーですが、筋痛が起きるとこの働きが鈍くなり、力のバランスが崩れて主動筋の活動が低下し、拮抗筋の活動が増えてしまう可能性があるんです。
  • 筋紡錘の入力抑制
    筋紡錘は筋肉の長さや伸び具合を感知するんですが、筋痛があるとこの筋紡錘の働きも鈍ります。これによって、筋肉が収縮する際の反射が弱まる可能性があるんですね。
  • 皮質運動ニューロンの興奮性低下
    最後に、脳の運動ニューロンの興奮性そのものが筋痛で低下するという仮説もあります。つまり、筋痛が脳の運動中枢を通じて「力を出しにくい状態」にしてしまうんです。

これらのメカニズムが単独で、あるいは複合的に作用して、筋痛による筋力低下が引き起こされていると考えられています。

これはリハビリテーションにも影響する

この発見は、リハビリの現場でも非常に重要です。筋肉痛があった場合、「どん鍛えよう!」とすると、うまくいかない場合があるということです。筋痛があると、脳が勝手にブレーキをかけてしまうため、患者さんが痛みなく発揮できる筋力がかなり制限されてしまう可能性があるんですね。

だから、筋痛を訴える患者さんには、無理に筋トレをするのではなく、神経系への影響も考慮して、痛みの程度に合わせた無理のないリハビリテーションを行うことが大切だと改めて実感させられました。

筋痛が「筋肉自体」じゃなく「脳」にブレーキをかけるなんて、なんだか意外ですよね。でも、こうした知見をもとに、筋痛があるときのトレーニング方法も今後どんどん進化していくと思います。痛い時は無理はしないは筋トレの面でも正しいようです。

参考文献

THOMAS GRAVEN-NIELSEN et al.

INHIBITION OF MAXIMAL VOLUNTARY CONTRACTION FORCE BY EXPERIMENTAL MUSCLE PAIN:
A CENTRALLY MEDIATED MECHANISM

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12402294/

 

 

 

「疲れが腰痛を引き起こす!?疲労と腰痛の深い関係」

こんにちはいつもブログを見ていただきありがとうございます^^
優里さんのベテルギウスという曲をペテルギウスだと思っていました。。。#べ で再認識したとたんタイトル名が出にくくなりました。。。

今日は疲労と腰痛の関係についての論文がありました^^

「疲れが腰痛を引き起こす!?疲労と腰痛の深い関係」

日常生活で感じる「疲れ」と「腰痛」。なんとなく関係がありそうですが、実は深いところでしっかりつながっているんです。今回は「疲労がどれだけ腰痛に影響するか」を、少し具体的にお伝えしていきます。


疲労が腰痛を引き起こす確率はなんと3.7倍!

この研究によると、疲労がたまっていると新たな腰痛を引き起こす確率がなんと3.7倍に跳ね上がることがわかっています。これは、例えば重い荷物を持つとか、無理な姿勢をとるといった「肉体的な負担」と同じくらい、もしくはそれ以上の影響がある可能性があるということです。

身体の疲れだけでなく、心の疲れもリスクに

ここでの「疲労」とは、ただ身体がしんどいだけじゃありません。肉体的な疲れは筋肉が硬くなって腰に負担をかけますが、精神的な疲れも腰痛のリスクを高めるんです。気持ちが疲れて集中力が落ちてしまうと、無理な動作や姿勢が増え、その結果として腰に負担がかかりやすくなってしまうわけです。

疲れた体で運動するとさらにリスクが高まる!

驚きかもしれませんが、疲労がたまった状態で運動をするのも腰痛のリスクを増やします。特に中程度から激しい運動(縄跳びからボート漕ぎのような運動)のコンボになると急性腰痛の発症が7.7倍にも上がるとのことです。しっかり休息を取らずに運動すると、体が回復しないまま負荷がかかりやすいので危ないのですね。


腰痛を防ぐには「疲労のケア」が必須!

腰痛を予防したいなら、まず「疲れたら休む」ことが何より大事。具体的には、十分な睡眠を取ること、ストレスを減らすことも効果的です。運動後は必ずクールダウンして、ストレッチで筋肉の疲れをほぐすことも忘れずに!

「今日は疲れがひどいな…」と感じた日は無理せず体を休め、次の活動に備えてください。体の声に耳を傾け、疲れをしっかりケアすることが、元気で腰痛のない日常につながると思います^^

「怪我のリスクが2.73倍!?スポーツで重要な“動きの左右バランス”?!」

「怪我のリスクが2.73倍!?スポーツで重要な“動きの左右バランス”とは」

スポーツをしている皆さん、特にアスリートの方にとって、怪我を防ぐことってものすごく重要です。今日は、大学アスリートを対象にした最新の研究から、「左右の動きのバランス」が怪我のリスクにどれだけ関わっているのかについてご紹介します。


FMSって何?

まず、「FMS」って聞きなれない方もいるかもしれませんが、これは**Functional Movement Screen(機能的動作スクリーニング)**の略。簡単にいうと、体の動きのクセやバランスをチェックして、怪我のリスクを事前に見つけるテストです。特にスポーツをしている人にとっては、身体のクセがそのまま怪我につながることも多いので、こういうテストが役立つんですね。

総合スコアだけじゃダメ?本当に大事なチェックポイント

この研究では、84名の大学アスリート(ボート、バレーボール、サッカー選手)を対象に、プレシーズンでFMSテストを行い、その後1年間の怪我の発生率を追跡しました。その結果わかったことは、FMSの総合スコアが14点以下だからといって、必ずしも怪我しやすいとは限らないということ。*過去の研究では14点以下だと怪我をしやすいと言われていた報告もあり。

ただし、重要なのはここから!「左右の非対称」や「スコア1」が出た項目があると、怪我のリスクがグンと高くなるんです。具体的には、左右で動きがズレていたり、基本的な動きができていない(スコア1)場合、そうでない人と比べて怪我のリスクが2.73倍も高いことがわかりました。

怪我のリスクを減らすために大切なこと

アスリートにとって、怪我はパフォーマンスに大きな影響を与える一番の敵です。この研究から分かるのは、総合スコアよりも、「個別のテスト」でどこに弱点があるかをしっかり見ることが大事だということ。つまり、ただ「スコアが良ければ安心」というわけではなく、「どの動きで左右差があるか」「どこで体の動きが制限されているか」を知ることが、怪我を防ぐための第一歩のようです。


結論:自分の体のクセを知って、しっかり改善しよう!

今回の研究が示しているのは、左右のバランスや体の動きにおける「偏り」を改善することが、怪我予防にすごく大事だということです。特にアスリートは、日頃からこの点をチェックして、体の動きを整えることで怪我のリスクを減らせる可能性が高いんです。これを読んでくださった皆さんも、ぜひ「自分の体のクセ」に気をつけて、怪我なくスポーツを楽しんでください!

参考文献

Predicting Musculoskeletal Injury in National Collegiate Athletic Association Division II Athletes From Asymmetries and Individual-Test Versus Composite Functional Movement Screen Scores
Monique Mokha, PhD, ATC, CSCS*; Peter A. Sprague, DPT, PT, OCS†; Dustin R. Gatens, MS, ATC‡
「49歳が分かれ道!KAテストで見える体の変化とその対策」

運動機能チェック「KAテスト」で見える体の変化 〜あなたの体は今、何歳?〜

こんにちは!今日は「KAテスト」という運動機能を総合的にチェックできるテストを紹介しつつ、年齢とともにどんな体の変化が起きるのかをお話しします。

KAテストって何?

「KA」とは、「KOJI AWARENESS(コージアウェアネス)」の略で、筋力、柔軟性、バランス能力など、体の運動機能をいろいろな角度から評価できるテストです。

このテストのいいところは、特別な機器や長い時間を必要とせず、簡単に運動機能をチェックできるところにあります。しかも、専門家に頼らなくても、自分でも評価ができちゃうんです。テストは11項目あり、それぞれに採点基準があって、最高スコアは50点。動きを3回チェックし、一番良いスコアを記録する仕組みです。平均して20分以内で終わるので、忙しい方でも気軽に受けやすいのもポイントです。
**室伏広治スポーツ庁長官のホームページにKAテストは紹介されていますhttps://kojimurofushi.net/wp/wp-content/uploads/2022/07/Appendix-1.pdf

体の3つのエリア別にスコアを出します

KAテストでは、体を以下の3つの部位ごとにチェックして、運動機能をスコア化しています:

  • 頸肩上肢複合体(NSU):首や肩の動き、腕の筋力など、肩から上のエリアをチェックします。
  • 体幹(コア):お腹や背中、体幹の安定性や柔軟性を測ります。体のバランスを保つためにとても大事な部分ですね。
  • 下肢(LE):脚全体の筋力や動きのスムーズさをチェック。脚の運動機能が落ちてくると、普段の歩きや立ち上がり動作にも影響が出ます。

年齢とともにスコアはどう変わる?

今回の研究では、年齢とともにKAテストのスコアがどのように変わるかを調べました。結果として、年齢が上がるにつれてスコアが少しずつ低下し、特に40代後半から50代前半でスコアの落ち込みが急に加速することがわかりました。この「49歳前後」が、運動機能が変わりやすいポイントだと言えます。

例えば、49歳を超えると、KAスコアの低下のスピードが上がり、年齢が1歳増えるごとにスコアがさらに下がる傾向にありました。特に肩や首、脚のスコア低下が目立つのですが、女性の場合は男性よりも肩や腕(頸肩上肢複合体)の機能低下が顕著だったという結果も出ています。

KAテストの活用法:50歳を迎える前にできること

このテストは、自分の運動機能が年齢とともにどう変化しているかを知り、予防や対策を考えるために役立ちます。例えば、50歳前後から肩や脚の運動機能が急に落ちてくることがわかった今、日常的にストレッチや簡単な筋力トレーニングを続けることが重要です。

KAテストを受けてみて、「自分の体はこんなふうに変わっているんだ!」と知ることで、予防や健康維持のモチベーションも上がります。50歳前後は体が大きく変わりやすい時期なので、早めにチェックして対策をスタートしましょう!

参考文献

Koji Murofushi at al

Exploring age-related changes in motor function: insights from the peak decline found in Koji Awareness screening test

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39143124/

 

朝に腰痛が起こりやすい理由とその予防法!

朝の腰痛はこうして起こる!そして、その予防法

みなさん、こんにちは、今回は「腰痛が朝に起こりやすい理由」とその対策についてお話しします。今回参考にした論文に腰痛が起こりやすい時間帯が挙げられていたので紹介します^^

で、結論から言いいますと、腰痛が起こりやすい時間帯は朝7時から12時。はい、ここ!朝時間帯から午前の間なんです!これには、ちゃんとした理由があるんですね。

寝ている間に、背骨(椎間板)が水分を吸収して膨らむんです。朝、私たちの背骨はフレッシュな状態で、実は日中よりも柔らかく、つまり”ケガしやすい”状態にあるんです。だから、そのタイミングで重たいものを持ったり、腰に負担がかかる動きをすると…「あ、やっちゃった!」となるわけです。

注意!腰に負担をかけやすい朝の動き

さらにですね、研究の中で「特に朝やると腰痛を引き起こしやすい動き」というのも挙がってます。こんな動き、思い当たりませんか?

  • 前かがみでの作業(例:ガーデニングや掃除)。この動き、朝やると腰にズキン!ときます。
  • 重い物を持ち上げる、不安定な物を運ぶ(例:車の上に置いた荷物を降ろす)。これも朝は要注意。

ただし、「朝とこれらの動きがどれだけ関係しているか」については、もっと調べる必要があるらしいです。でも、腰痛予防には『どの動きをするか』だけじゃなくて、『いつ動くか』も大事ってことは確かなんですね。

腰痛の予防は「動き」と「タイミング」

ポイントは、朝のこの「ちょっと危険な時間帯」を頭に入れて、腰に負担をかけすぎないようにすること。例えば、朝に重い物を持たないとか、前かがみの作業はできるだけ避けるとか、慎重に動くことで、腰への負担はグッと減ります。

ぜひ、毎日の小さな工夫で、腰痛予防していきましょう!

参考文献
https://www.researchgate.net/profile/Jenny-Setchell/publication/331985420_What_Triggers_an_LBP_Flare_A_Content_Analysis_of_Individuals’_Perspectives/links/5cd5bf87458515712ea2ea9e/What-Triggers-an-LBP-Flare-A-Content-Analysis-of-Individuals-Perspectives.pdf