➡️➡️鼠径部(股関節の付け根)
高齢化に伴い『変形性股関節症(股関節が関節炎を起こして変形してしまう病気)』の患者さんは増加しています。
当院にも股関節の痛みを訴える方が多く来院され、特に鼠径部(股関節の付け根)に痛みを感じる方が多数います。
そのような場合はレントゲン撮影をし、必要に応じてMRI検査を行い、確定診断をつけます。
今回は、当院:鬼頭先生(理学療法士)の論文を紹介します(1)。
結論から言うと鼠径部に痛みがある場合、レントゲン画像に悪いところがあまりなくても、MRIでは股関節の水腫(関節に水が溜まる)や骨への負担が認められる場合が多い、とのことです。
それでは!
《対象》
・鼠径部に痛みがある
・レントゲン&MRI検査をした30名
※レントゲン(関節の状態により)
・前期…ほぼ正常
・初期…関節の間が少し狭まっている
・進行期…初期より狭まっている
・末期…進行期より狭まっている
進行期・末期→「骨棘(異常な骨組織)」や「骨嚢胞(骨の空洞)」ができたりする。
※MRI…関節内の大腿骨頭臼蓋に「骨髄浮腫(骨髄に炎症が起き腫れている状態)」や「関節水腫(関節に水が溜まること)」が認められるかを確認。
《結果》
・初期の股関節症→関節水腫あり:40%
→骨髄浮腫と関節水腫両方:33%
股関節症の初期でも
・レントゲン…関節の軟骨が少し減っている(進行期、末期と比べると軽症)
・MRI …約70%に骨髄浮腫や関節水腫が認められた。
《まとめ》
関節内に水が溜まっていたり、骨の中に炎症がある 状態で生活していると、痛みが増したり変形が進んだりすることがあります。
今回の研究から言えるのは、レントゲンでは軽症な状態でも「鼠径部に痛み」があったら、MRI を撮って関節内の状況を詳しく診たほうが良い、ということです。
「痛いのは筋力がなくなったから、歩かなくなったから」という自己判断で、痛みを堪え無理して筋力トレーニングやウォーキングを行った結果、症状が悪化してしまい受診する、というケースも少なくありません。
関節内や骨に炎症がある場合、無理なトレーニングリハビリをしてしまうと逆効果になることがあります。関節内の状態をしっかり把握してから、治療を進めていくことが大切です(^_^)
皆様お気を付けください♫
引用
(1) 鬼頭ら. 鼠径部痛を有する変形性股関節症患者の異なる病期でのMRI所見の比較. 臨床整形外科 第55巻 第10号 2020年
西川整形外科ホームページ: http://www.naoso.com/