〜振り返る・ひねる動作が腰に負担をかけているかも。そのメカニズムを研究が解明〜

〜振り返る・ひねる動作が腰に負担をかけているかも。そのメカニズムを研究が解明〜


こんにちは、理学療法士の杉浦史郎です。

「後ろを振り返るとき、腰がズキッとする」「体をひねる動作をすると腰が痛くなる」——そんなお悩みをお持ちの方はいらっしゃいませんか?

実は、慢性的な腰痛をお持ちの方は、体を回す動作のときに骨盤と背骨の動き方のバランスが崩れていることが研究でわかっています。今回は、その仕組みについてわかりやすくお伝えします。


目次

体を回すとき、どこが動いているの?

「体をひねる」「振り返る」といった動作(体幹回旋)は、一見シンプルに見えますが、実は骨盤と背骨が協力して動くことで成り立っています。

健康な方の場合、体を回すときは骨盤(股関節)が主に動き、背骨はその補助として少し動くというバランスが保たれています。骨盤や股関節は大きな関節なので、回旋の動きを受け止める力があります。

ところが、慢性腰痛をお持ちの方では、このバランスが崩れ、背骨が必要以上にひねられてしまうことがあります。腰椎(腰の骨)はもともと回旋の動きが苦手な部位なので、過度にひねられると組織に余計な負担がかかってしまいます。


研究でわかったこと

この研究(Taniguchi et al., PLoS ONE 2017)では、慢性腰痛をお持ちの方15名と健康な方15名に、立った状態で体を左右に最大限回してもらい、骨盤と背骨それぞれの動き方を3次元の動作解析装置で精密に計測・比較しました。

その結果、次の2つの重要な違いが明らかになりました。

① 慢性腰痛の方は、背骨が骨盤より多く回っていた

健康な方では、体を回すときに骨盤がしっかり動き、背骨はそれに伴って少し動きます。しかし慢性腰痛の方では、骨盤があまり動かずに背骨だけが多く動くというパターンが見られました。

イメージとしては「本来の健康な体は、風に吹かれる『しなやかな柳の木』のようです。風が吹けば、根元から幹、そして枝先へと、木全体がゆったりと連動してしなることで、どこにも無理な力を溜めずに受け流すことができます。

しかし、慢性腰痛の方の状態は、『根元と幹の下半分(骨盤)がコンクリートで固められた柳』のようなものです。

風が吹いたとき、本来なら全体でしなりたいのに、下の部分がピクリとも動きません。すると、固まった境目の一箇所(腰)だけが、折れんばかりに激しくしなることになります。全体で逃がすべき力が、動くことを許された一箇所だけに集中してしまい、やがてそこから『パキッ』とヒビが入ってしまう……そんな無理が、慢性腰痛患者さんの腰で起きている状態です。

② 体を回すとき、背骨が同時に「反る」動きをしていた

慢性腰痛の方では、体を回す動作に合わせて、背骨が後ろに反る動き(伸展)も一緒に起きていることがわかりました。

つまり、「回す+反る」という複合的な動きが腰の組織に余分な負担をかけている可能性があります。体を回すたびに腰椎の関節や椎間板に繰り返しストレスがかかることが、慢性的な痛みの一因になっていると考えられます。


日常生活で思い当たりませんか?

次のような動作で腰に負担を感じる方は、このような動きのクセがある可能性があります。

  • 後ろを振り返るとき、腰から無理やり回している感じがある
  • 車の運転中に後方確認するとき、腰がつらくなる
  • スポーツで体をひねる動作(バッティング・ゴルフスイング・テニスなど)で腰が痛くなる
  • 掃除や洗い物など、体をひねる家事で腰に負担を感じる

こうした動作での腰への負担は、「力を入れすぎているから」「筋力が弱いから」だけが原因ではなく、動き方のパターンそのものに改善の余地がある場合が多くあります。


リハビリでできること

このような動きのクセは、適切なリハビリで改善できる可能性があります。具体的には、次のようなアプローチが有効です。

  • 股関節の柔軟性を高める:骨盤がしっかり動くよう、股関節のストレッチや可動域訓練を行います
  • 正しい体の回し方を身につける:骨盤から動かす動作パターンを意識的に練習します
  • 体幹の安定性を高める:背骨が余分にひねられないよう、体幹まわりの筋肉を適切に使えるようにトレーニングします

「腰が痛いから、ひねる動作は避けよう」と動かなくなると、かえって体の動きが硬くなり、痛みが長引くこともあります。痛みの出ない範囲で、正しい動き方を少しずつ練習していくことが大切です。

「体のひねり方が悪いのかな」「どう動けばいいかわからない」と不安に感じている方も、どうか一人で抱え込まないでください。一緒に動き方を確認しながら、無理のない範囲で取り組んでいきましょう。いつでもお気軽にご相談ください。


参考文献:Taniguchi M, Tateuchi H, Ibuki S, Ichihashi N. “Relative mobility of the pelvis and spine during trunk axial rotation in chronic low back pain patients: A case-control study.” PLoS ONE 12(10) (2017) e0186369.