「利き手・利き足があるから腰の関節が左右非対称」は本当? 3Dモデルで調べてわかったこと

# 「利き手・利き足があるから腰の関節が左右非対称」は本当? 3Dモデルで調べてわかったこと

スポーツをしている中学生・高校生のお子さんが「腰が痛い」と言い出したとき、腰椎分離症の診断を受けるケースが少なくありません。リハビリ室で親御さんからよく聞かれる質問があります。「うちの子は右利きだから、右の腰に負担がかかったんでしょうか?」という問いです。

長年、この疑問がありました。今回、千葉大学や福島県立医科大学の研究チームとともに、この問いに正面から向き合った研究をまとめ、2025年にヨーロッパの脊椎専門誌(European Spine Journal)に掲載していただきました。CT画像から腰椎を3Dモデルとして再現し、関節の角度を精密に計測するという、国内でも前例の少ないアプローチです。

腰椎分離症とは何か

腰椎分離症は、腰の骨(腰椎)の後ろ側にある「椎弓峡部」という細い部分に疲労骨折が起きる病気です。繰り返しの腰の反り動作や回旋が積み重なることで発症し、スポーツに打ち込む10代の子どもたちに多く見られます。野球・サッカー・体操・バレーボールなど、腰を大きく動かす競技で特に起きやすいことが知られています。

転倒や衝突で起きる骨折とは異なり、じわじわと進行する疲労骨折です。初期段階ではレントゲンに映らないことも多く、MRIやCTではじめて確認できるケースが多いのが特徴。「腰が張る」「練習後だけ痛い」という軽い訴えから始まることも多く、早期発見のためにはしっかりと画像検査を行うことが大切です。

発症した骨折の部位が「左右どちらか片側」であることも多く、「なぜ左だけ?」「なぜ右だけ?」という疑問が患者さんや保護者の方から上がります。これが今回の研究のきっかけのひとつでもありました。

「椎間関節のトロピズム」という概念

腰椎には、隣の骨どうしをつなぐ小さな関節(椎間関節)が左右に一対あります。通常この関節は左右ほぼ対称の向きに並んでいますが、人によっては左右で角度が微妙にずれていることがあります。この左右差のことを「トロピズム」と呼びます。

以前から「椎間関節にトロピズムがある人は分離症になりやすいのではないか」という仮説がありました。CT画像を使った2次元的な測定で、その関連性を示唆する論文もいくつか発表されていたためです。

ただし、2DのCT画像で測定するときには難点があります。「水平面(横断面)をどこに設定するか」が測定者によってぶれやすく、結果の精度に影響してしまうのです。骨盤の傾きや腰椎の前弯(前カーブ)の程度によって、CTの横断面の見え方はかなり変わります。同じ患者さんでも測定者が変われば数値がずれる可能性があり、この問題が気になっていました。

3Dモデルで正確に測り直そうと思った理由

2Dで測定するときの誤差をなくすために、私たちが参考にしたのは仙腸関節の研究です。共同研究者の伊藤先生が3D骨モデルを用いて仙腸関節の非対称性を計測した研究では、測定者間の信頼性が高いことが示されていました。

3Dモデルを使えば、解剖学的なランドマーク(骨の目印)をもとに座標系を固定して測定できるため、測定者によるぶれが少なくなります。腰椎をCT画像から立体的に再構成し、上関節突起・下関節突起それぞれの面を最小二乗法でフィットした平面として定義して角度を計算するという手法を用いました。これにより、従来の2D測定では生じやすかった水平面設定のばらつきを排除できます。

「3Dで測り直したら、以前の報告と同じ結果になるのか、それとも変わるのか」。この問いを確かめるために研究を進めました。

研究の対象と方法

当院で、2017年〜2018年に診断された10〜18歳の分離症患者70名(男性55名、女性15名)を対象としました。全員が「超初期」または「初期」段階の片側性分離症です。骨が不安定になる前の段階を対象にしたのは、骨の変形が関節の形態に影響を与える前の状態を調べることが研究の目的に合っていると判断したためです。

CT画像のDICOMデータから腰椎の立体モデルを作成し、解剖学的な座標系を設定。上関節突起と下関節突起それぞれの角度を4パターンで比較しました。右左の差、分離症側と反対側の差、利き手側と非利き手側の差、利き足側と非利き足側の差です。

利き手は56名が右利き、6名が左利き。利き足も56名が右、5名が左という内訳でした。

結果として見えてきたこと

4つの比較すべてで、関節角度に有意な差は見られませんでした。

右側の上関節突起の平均角度は43.0度、左側は43.1度。分離症がある側は42.9度、ない側は43.2度。利き手側は42.6度、非利き手側は43.1度。利き足側は42.1度、非利き足側は42.9度。どれも1度以下の差しかなく、統計的にも「差なし」という結果でした。下関節突起も同様で、すべての比較で有意差は出ませんでした。

「左右差が原因」という見方を見直すきっかけに

以前の研究では「分離症がある側の関節は正面向きになりやすい」と2D測定で報告されていましたが、私たちの3Dモデルによる計測では、その傾向は確認できませんでした。

この違いはどこからくるのか。2D測定では水平面の設定がばらつきやすく、それが結果に影響していた可能性が高いのようです。3Dモデルでは解剖学的ランドマークをもとに座標系を固定して測定するため、測定者のブレを最小限に抑えられます。同じ問いを高い精度で測り直したことで、過去の報告とは異なる結論に至りました。

ただし、この研究には限界もあります。健常者との比較ができていないこと、また3Dモデル上での2次元的な角度評価にとどまっており、より詳細な3次元的解析の余地が残っています。今後の研究課題として捉えています。

では、なぜ片側だけに分離症が起きるのか

関節の形態的な左右差が原因でないとすれば、何が発症する側を決めているのでしょうか。

過去の報告では、右投げ右打ちの野球選手は左側に分離症が起きやすいことが示されています。腰を右回旋させるときに、左の椎弓峡部に大きなストレスがかかるためです。サッカー選手では、キック動作による蹴り足と軸足の非対称な負荷が関係しているともいわれます。ハムストリングスや腸腰筋の柔軟性の左右差が分離症のリスク要因になるという報告もあります。

私たちの研究結果と照らし合わせると、「骨の形の左右差」よりも「どんな動きを繰り返してきたか」「どの筋肉が硬いか」といったスポーツ特異的・機能的な要因が、発症する側を決めるうえで重要なのかもしれません。診療の現場でも、関節の形を見るだけでなく、スポーツ動作や筋の柔軟性を評価することが分離症の予防や再発防止につながると感じています。

まとめ

腰椎分離症の初期段階の患者70名を3Dモデルで精密に測定した結果、椎間関節の左右差(トロピズム)は分離症の素因とはならないことがわかりました。利き手・利き足との関連も確認されませんでした。

「関節の形が非対称だから発症した」「右利きだから、左利きだかた。。。」という解釈は、少なくとも初期分離症の段階では根拠が薄いのようです。むしろ、スポーツ種目ごとの動作パターンや筋の柔軟性など、機能面からアプローチする視点が予防と治療に直結するのではないかと考えています。

お子さんの腰の痛みが気になる方、スポーツと腰椎分離症の関係について詳しく知りたい方は、ぜひ一度ご相談ください。

参考文献:Sugiura S, et al. Lumbar facet angle tropism and hand and foot dominance in patients with isthmic spondylolysis. European Spine Journal, 2025. https://doi.org/10.1007/s00586-025-08759-3

〜振り返る・ひねる動作が腰に負担をかけているかも。そのメカニズムを研究が解明〜

〜振り返る・ひねる動作が腰に負担をかけているかも。そのメカニズムを研究が解明〜


こんにちは、理学療法士の杉浦史郎です。

「後ろを振り返るとき、腰がズキッとする」「体をひねる動作をすると腰が痛くなる」——そんなお悩みをお持ちの方はいらっしゃいませんか?

実は、慢性的な腰痛をお持ちの方は、体を回す動作のときに骨盤と背骨の動き方のバランスが崩れていることが研究でわかっています。今回は、その仕組みについてわかりやすくお伝えします。


体を回すとき、どこが動いているの?

「体をひねる」「振り返る」といった動作(体幹回旋)は、一見シンプルに見えますが、実は骨盤と背骨が協力して動くことで成り立っています。

健康な方の場合、体を回すときは骨盤(股関節)が主に動き、背骨はその補助として少し動くというバランスが保たれています。骨盤や股関節は大きな関節なので、回旋の動きを受け止める力があります。

ところが、慢性腰痛をお持ちの方では、このバランスが崩れ、背骨が必要以上にひねられてしまうことがあります。腰椎(腰の骨)はもともと回旋の動きが苦手な部位なので、過度にひねられると組織に余計な負担がかかってしまいます。


研究でわかったこと

この研究(Taniguchi et al., PLoS ONE 2017)では、慢性腰痛をお持ちの方15名と健康な方15名に、立った状態で体を左右に最大限回してもらい、骨盤と背骨それぞれの動き方を3次元の動作解析装置で精密に計測・比較しました。

その結果、次の2つの重要な違いが明らかになりました。

① 慢性腰痛の方は、背骨が骨盤より多く回っていた

健康な方では、体を回すときに骨盤がしっかり動き、背骨はそれに伴って少し動きます。しかし慢性腰痛の方では、骨盤があまり動かずに背骨だけが多く動くというパターンが見られました。

イメージとしては「本来の健康な体は、風に吹かれる『しなやかな柳の木』のようです。風が吹けば、根元から幹、そして枝先へと、木全体がゆったりと連動してしなることで、どこにも無理な力を溜めずに受け流すことができます。

しかし、慢性腰痛の方の状態は、『根元と幹の下半分(骨盤)がコンクリートで固められた柳』のようなものです。

風が吹いたとき、本来なら全体でしなりたいのに、下の部分がピクリとも動きません。すると、固まった境目の一箇所(腰)だけが、折れんばかりに激しくしなることになります。全体で逃がすべき力が、動くことを許された一箇所だけに集中してしまい、やがてそこから『パキッ』とヒビが入ってしまう……そんな無理が、慢性腰痛患者さんの腰で起きている状態です。

② 体を回すとき、背骨が同時に「反る」動きをしていた

慢性腰痛の方では、体を回す動作に合わせて、背骨が後ろに反る動き(伸展)も一緒に起きていることがわかりました。

つまり、「回す+反る」という複合的な動きが腰の組織に余分な負担をかけている可能性があります。体を回すたびに腰椎の関節や椎間板に繰り返しストレスがかかることが、慢性的な痛みの一因になっていると考えられます。


日常生活で思い当たりませんか?

次のような動作で腰に負担を感じる方は、このような動きのクセがある可能性があります。

  • 後ろを振り返るとき、腰から無理やり回している感じがある
  • 車の運転中に後方確認するとき、腰がつらくなる
  • スポーツで体をひねる動作(バッティング・ゴルフスイング・テニスなど)で腰が痛くなる
  • 掃除や洗い物など、体をひねる家事で腰に負担を感じる

こうした動作での腰への負担は、「力を入れすぎているから」「筋力が弱いから」だけが原因ではなく、動き方のパターンそのものに改善の余地がある場合が多くあります。


リハビリでできること

このような動きのクセは、適切なリハビリで改善できる可能性があります。具体的には、次のようなアプローチが有効です。

  • 股関節の柔軟性を高める:骨盤がしっかり動くよう、股関節のストレッチや可動域訓練を行います
  • 正しい体の回し方を身につける:骨盤から動かす動作パターンを意識的に練習します
  • 体幹の安定性を高める:背骨が余分にひねられないよう、体幹まわりの筋肉を適切に使えるようにトレーニングします

「腰が痛いから、ひねる動作は避けよう」と動かなくなると、かえって体の動きが硬くなり、痛みが長引くこともあります。痛みの出ない範囲で、正しい動き方を少しずつ練習していくことが大切です。

「体のひねり方が悪いのかな」「どう動けばいいかわからない」と不安に感じている方も、どうか一人で抱え込まないでください。一緒に動き方を確認しながら、無理のない範囲で取り組んでいきましょう。いつでもお気軽にご相談ください。


参考文献:Taniguchi M, Tateuchi H, Ibuki S, Ichihashi N. “Relative mobility of the pelvis and spine during trunk axial rotation in chronic low back pain patients: A case-control study.” PLoS ONE 12(10) (2017) e0186369.

慢性腰痛の人は「座り方」が違う——あなたはどちらのタイプ?

〜腰痛の種類によって、正しい姿勢は人それぞれ違います〜


こんにちは、理学療法士の杉浦史郎です。

「座っていると腰が痛くなる」「長時間座っていられない」——慢性的な腰痛をお持ちの患者さんから、こういったお話をよく伺います。

実は、腰痛の方の「座り方のクセ」は、痛みのないと方と異なっていることが研究で明らかになっています。さらに興味深いのは、腰痛の方の中でも、「まったく逆のタイプ」の座り方のクセがあるということです。

今回は、慢性腰痛と座り姿勢の関係を調べた研究(Dankaerts et al., Spine 2006)をもとに、腰痛と姿勢のつながりについてお伝えします。


「慢性腰痛」はひとくくりにできない

レントゲンやMRIで原因が特定できない腰痛を「非特異的腰痛」と呼びます。欧米では腰痛全体の約85%がこのタイプとされていますが、日本では診断技術や医療環境の違いから、より細かく原因が特定されるケースも多くあります。それでも、「検査しても異常なし」と言われながら慢性的な腰の痛みに悩まれている方は、日本でも決して少なくありません。

これまで腰痛の研究では、患者さんをひとまとめにして比較することが多く、「腰痛の人と健康な人の姿勢に差はない」という結果が出ることもありました。しかし最近の研究では、腰痛の方の中にもいくつかのタイプがあり、タイプ別に見ると明確な違いが現れることがわかってきました。


慢性腰痛の2つのタイプ

この研究では、慢性腰痛の患者さんを専門家が丁寧に評価し、2つのタイプに分けました。

タイプ① 屈曲パターン(曲がり込みタイプ)

腰を丸めた姿勢(猫背・骨盤後傾)で座る傾向があります。前かがみや腰を曲げた姿勢で症状が出やすいのが特徴です。長時間座っていると、じわじわと腰が丸まっていき、痛みが増してくるタイプです。

タイプ② 伸展パターン(反り腰タイプ)

腰を必要以上に反らせた姿勢(過度な反り腰・骨盤前傾)で座る傾向があります。腰を伸ばしたり反らしたりする動きで症状が出やすいのが特徴です。「姿勢よく座ろう」と意識するあまり、腰を反らせすぎてしまうケースもあります。


研究でわかったこと:タイプ別に姿勢がまったく違う

この研究では、慢性腰痛の患者さん33名と、腰痛のない健康な方34名の座り姿勢を精密な機器で計測・比較しました。

腰痛患者さん全体をひとまとめにして比較した場合は、健康な方との差がはっきり出ませんでした。しかしタイプ別に分けて比較すると、明確な違いが現れました。

  • 屈曲パターンの方:健康な方と比べて、腰がより丸まった(後弯した)姿勢で座っていた
  • 伸展パターンの方:健康な方と比べて、腰がより反った(前弯した)姿勢で座っていた

さらに興味深いのは、どちらのタイプも「意図的に姿勢を変える力」が低下していたことです。「もっと猫背になってみてください」とお願いしたとき、健康な方は大きく姿勢を変えられたのに対し、腰痛の方は変化が少なかったのです。これは、腰痛によって腰まわりの「姿勢をコントロールする力」が落ちていることを示しています。


あなたはどちらのタイプ?

ご自身の座り方のクセを確認してみてください。

屈曲パターン(腰を丸めるタイプ)の方に多い特徴

  • 長く座っていると腰が自然と丸まってくる
  • 前かがみの作業(デスクワークやスマートフォン操作)で腰が痛くなりやすい
  • 座っているときに腰当て(ランバーサポート)を使うと楽になる

伸展パターン(腰を反らすタイプ)の方に多い特徴

  • 「気をつけ」のように背筋を伸ばしていないと落ち着かない
  • 腰を反らせた動作(荷物を持ち上げる・立ちっぱなしなど)で腰が痛くなりやすい
  • 腰当てがあると逆に痛くなることがある

大切なのは「万人に共通の正しい姿勢」ではなく「あなたに合った姿勢」

この研究が示す最も重要なメッセージは、腰痛の方への姿勢指導は、タイプによって変えなければならないということです。

「腰痛には腰当てが効果的」とよく言われますが、それは屈曲パターン(丸まりタイプ)の方には有効でも、伸展パターン(反り腰タイプ)の方には逆効果になることがあります。「とにかく姿勢よく背筋を伸ばして」というアドバイスも、伸展パターンの方には痛みを悪化させる可能性があります。

腰痛を長引かせないためには、まず自分がどちらのタイプかを知り、それに合ったアプローチで姿勢や動き方を改善していくことが大切です。

「なかなか腰痛が改善しない」「いろんな治療を試しても変わらない」という方は、もしかするとご自身のタイプに合っていないアプローチをされている可能性があります。一度、専門家に姿勢のクセを評価してもらうことをおすすめします。

当院でも、患者さん一人ひとりの姿勢パターンをしっかり評価したうえで、その方に合ったリハビリや生活指導を行っています。「自分はどちらのタイプかな?」と気になる方は、お気軽にご相談ください。


参考文献:Dankaerts W, O’Sullivan P, Burnett A, Straker L. “Differences in Sitting Postures are Associated With Nonspecific Chronic Low Back Pain Disorders When Patients Are Subclassified.” Spine 31(6) (2006) 698–704.

「腰椎分離症は問診票で早期発見できる?スポーツ現場でも使えるチェックポイントを研究で解明」

〜「うちの子、大丈夫かな」と感じたら、まずここをチェックしてみてください〜


こんにちは、理学療法士の杉浦史郎です。

「腰が痛いと言っているけど、練習を休むほどじゃないみたい……でも、本当に大丈夫かな」

スポーツを頑張るお子さんを持つ保護者の方から、こんな言葉をよく聞きます。腰の痛みは外から見えないぶん、深刻さがわかりにくく、受診のタイミングに迷ってしまいますよね。

今回は、我々が2024年に国際学術誌『European Spine Journal』に発表した研究をもとに、「どんな子が腰椎分離症になりやすいか」を問診票(アンケート)で早期に見つけられるかを調べた研究についてお話しします。難しい話は抜きにして、日常生活に役立てていただける内容をお伝えします。


腰椎分離症って、どんな病気?

腰椎分離症は、腰の骨の一部に疲労骨折が起きる病気です。成長期のお子さん、特にスポーツを一生懸命頑張っている中学生・高校生に多く見られます。

つらいのは、初期のうちはレントゲンに映らないことが多い点です。「レントゲンで異常なし」と言われても、実は分離症が始まっているケースがあります。早めに気づいてMRI検査を受けることが、骨の回復にとってとても大切です。

だからこそ、「病院に行くべきかどうか」を判断するためのわかりやすいサインが必要だと、私たちは考えました。


私たちの研究:アンケートで分離症を早期に疑えるか?

腰痛で受診した18歳以下の患者さん69名に、MRI検査と自記式アンケート(患者さん自身が答える問診票)を実施しました。その結果、24名が早期腰椎分離症、45名が「原因のはっきりしない腰痛」と診断されました。

アンケートでは、次のようなことを聞きました。

  • 週に何日練習しているか
  • 1日何時間練習しているか
  • どんなときに腰が痛むか(動いているとき・立っているとき・座っているとき)
  • 痛みの場所や広がり
  • 腰を反らしたときや曲げたときの変化 など

これらの答えと、実際に分離症かどうかの診断を照らし合わせて、「どの項目が分離症のサインになりうるか」を分析しました。


結果:こんなお子さんは、早めの受診をおすすめします

分析の結果、腰椎分離症と関連が見られた項目は主に4つでした。

① 週5日以上、スポーツをしている

毎日のように練習している選手ほど、分離症との関連が見られました。腰椎分離症は「疲労骨折」なので、繰り返しの負荷が積み重なることで起きます。「毎日頑張っているから腰が痛いのかな」と思ったら、一度受診して確かめることをおすすめします。決してサボりではありません。体が「休んで」とサインを出しているのかもしれません。

② 1日1.5時間以上、練習している

練習時間が長いお子さんほど、分離症との関連が見られました。週17時間以上の練習が分離症リスクと関連するという過去の研究とも一致しています。長時間練習を続けているお子さんの腰痛は、「疲れているだけ」と見過ごさないようにしてください。

③ 動いているときは痛いのに、じっとしていると楽になる

「走ったり体を動かしたりすると腰が痛むが、立ったり座ったりしていると楽」——このパターンが、分離症の特徴的なサインであることが、今回の研究でも確認されました。これは私たちが以前の研究でも報告していた、分離症に特有の痛み方です。

「痛みはあるけど座っていれば平気」という理由で受診を後回しにしてしまうケースがありますが、それこそが分離症のサインかもしれません。

④ 男の子に多いが、女の子も油断は禁物

今回の研究で最も関連が強かったのが性別でした。統計的には男の子の方が分離症になりやすい傾向があります。これはサッカーや野球など、腰への負担が大きいスポーツをしている割合が男子に多いためと考えられます。

ただし、女の子がならないわけではありません。今回の研究でも女性の分離症患者さんが診断されていますし、体操・バレーボール・陸上など腰を大きく使うスポーツに取り組む女の子にも起こりえます。「女の子だから大丈夫」とは思わず、腰の痛みが続くようなら同じようにご相談ください。


まとめ:こんなときは、早めにご相談ください

以下のチェックリストを参考にしてみてください。

  • ✅ 週5日以上、スポーツの練習をしている
  • ✅ 1日1.5時間以上、練習している
  • ✅ 動いているときは腰が痛いのに、じっとしていると楽になる
  • ✅ 特に男の子——ただし女の子も例外ではありません

これらに複数当てはまる場合は、たとえ「レントゲンで異常なし」と言われていても、ぜひMRI検査を受けることをおすすめします。

「大げさかな」と思わないでください。お子さんが腰の痛みを訴えているときは、その声をしっかり受け止めてあげることが大切です。早期発見・早期治療が、スムーズなスポーツ復帰への一番の近道です。

少しでも気になることがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。一緒に考えましょう。


参考文献:Sugiura S, Aoki Y, Oyama T, et al. “Low back pain characteristics in adolescent patients with early-stage spondylolysis: a prospective study.” European Spine Journal (2024). https://doi.org/10.1007/s00586-024-08478-1