慢性腰痛の人は「座り方」が違う——あなたはどちらのタイプ?

〜腰痛の種類によって、正しい姿勢は人それぞれ違います〜


こんにちは、理学療法士の杉浦史郎です。

「座っていると腰が痛くなる」「長時間座っていられない」——慢性的な腰痛をお持ちの患者さんから、こういったお話をよく伺います。

実は、腰痛の方の「座り方のクセ」は、痛みのないと方と異なっていることが研究で明らかになっています。さらに興味深いのは、腰痛の方の中でも、「まったく逆のタイプ」の座り方のクセがあるということです。

今回は、慢性腰痛と座り姿勢の関係を調べた研究(Dankaerts et al., Spine 2006)をもとに、腰痛と姿勢のつながりについてお伝えします。


目次

「慢性腰痛」はひとくくりにできない

レントゲンやMRIで原因が特定できない腰痛を「非特異的腰痛」と呼びます。欧米では腰痛全体の約85%がこのタイプとされていますが、日本では診断技術や医療環境の違いから、より細かく原因が特定されるケースも多くあります。それでも、「検査しても異常なし」と言われながら慢性的な腰の痛みに悩まれている方は、日本でも決して少なくありません。

これまで腰痛の研究では、患者さんをひとまとめにして比較することが多く、「腰痛の人と健康な人の姿勢に差はない」という結果が出ることもありました。しかし最近の研究では、腰痛の方の中にもいくつかのタイプがあり、タイプ別に見ると明確な違いが現れることがわかってきました。


慢性腰痛の2つのタイプ

この研究では、慢性腰痛の患者さんを専門家が丁寧に評価し、2つのタイプに分けました。

タイプ① 屈曲パターン(曲がり込みタイプ)

腰を丸めた姿勢(猫背・骨盤後傾)で座る傾向があります。前かがみや腰を曲げた姿勢で症状が出やすいのが特徴です。長時間座っていると、じわじわと腰が丸まっていき、痛みが増してくるタイプです。

タイプ② 伸展パターン(反り腰タイプ)

腰を必要以上に反らせた姿勢(過度な反り腰・骨盤前傾)で座る傾向があります。腰を伸ばしたり反らしたりする動きで症状が出やすいのが特徴です。「姿勢よく座ろう」と意識するあまり、腰を反らせすぎてしまうケースもあります。


研究でわかったこと:タイプ別に姿勢がまったく違う

この研究では、慢性腰痛の患者さん33名と、腰痛のない健康な方34名の座り姿勢を精密な機器で計測・比較しました。

腰痛患者さん全体をひとまとめにして比較した場合は、健康な方との差がはっきり出ませんでした。しかしタイプ別に分けて比較すると、明確な違いが現れました。

  • 屈曲パターンの方:健康な方と比べて、腰がより丸まった(後弯した)姿勢で座っていた
  • 伸展パターンの方:健康な方と比べて、腰がより反った(前弯した)姿勢で座っていた

さらに興味深いのは、どちらのタイプも「意図的に姿勢を変える力」が低下していたことです。「もっと猫背になってみてください」とお願いしたとき、健康な方は大きく姿勢を変えられたのに対し、腰痛の方は変化が少なかったのです。これは、腰痛によって腰まわりの「姿勢をコントロールする力」が落ちていることを示しています。


あなたはどちらのタイプ?

ご自身の座り方のクセを確認してみてください。

屈曲パターン(腰を丸めるタイプ)の方に多い特徴

  • 長く座っていると腰が自然と丸まってくる
  • 前かがみの作業(デスクワークやスマートフォン操作)で腰が痛くなりやすい
  • 座っているときに腰当て(ランバーサポート)を使うと楽になる

伸展パターン(腰を反らすタイプ)の方に多い特徴

  • 「気をつけ」のように背筋を伸ばしていないと落ち着かない
  • 腰を反らせた動作(荷物を持ち上げる・立ちっぱなしなど)で腰が痛くなりやすい
  • 腰当てがあると逆に痛くなることがある

大切なのは「万人に共通の正しい姿勢」ではなく「あなたに合った姿勢」

この研究が示す最も重要なメッセージは、腰痛の方への姿勢指導は、タイプによって変えなければならないということです。

「腰痛には腰当てが効果的」とよく言われますが、それは屈曲パターン(丸まりタイプ)の方には有効でも、伸展パターン(反り腰タイプ)の方には逆効果になることがあります。「とにかく姿勢よく背筋を伸ばして」というアドバイスも、伸展パターンの方には痛みを悪化させる可能性があります。

腰痛を長引かせないためには、まず自分がどちらのタイプかを知り、それに合ったアプローチで姿勢や動き方を改善していくことが大切です。

「なかなか腰痛が改善しない」「いろんな治療を試しても変わらない」という方は、もしかするとご自身のタイプに合っていないアプローチをされている可能性があります。一度、専門家に姿勢のクセを評価してもらうことをおすすめします。

当院でも、患者さん一人ひとりの姿勢パターンをしっかり評価したうえで、その方に合ったリハビリや生活指導を行っています。「自分はどちらのタイプかな?」と気になる方は、お気軽にご相談ください。


参考文献:Dankaerts W, O’Sullivan P, Burnett A, Straker L. “Differences in Sitting Postures are Associated With Nonspecific Chronic Low Back Pain Disorders When Patients Are Subclassified.” Spine 31(6) (2006) 698–704.