レントゲンで異常なしでも信じちゃダメ?スポーツで腰が痛くてプレーできないならMRIを撮るべき理由
「レントゲンを撮ったけど異常なし。でも腰が痛くてスポーツができない。」
整形外科のクリニックで理学療法士として働いていると、こんな状態で来院する中高生アスリートに出会います。
結論から言うと、レントゲンで異常なしでも安心してはいけないケースがあります。それが「腰椎分離症」です。
腰椎分離症とはどんな状態か
腰椎分離症は、腰の骨の一部(椎弓峡部)に亀裂が入る疲労骨折です。ジャンプ・腰の反り・回旋動作を繰り返すスポーツで起こりやすく、サッカー・野球・バレーボール・体操などに多く見られます。
一般人口での発生率は約6%。腰痛を訴えるスポーツ選手に限ると、50%を超えるケースも報告されています。ある研究では、腰痛で受診した中高生アスリートの52.9%が腰椎分離症だったとのデータもあります。
「筋肉痛だろう」と流していたら骨の問題だった、というのが珍しくない状態です。
スコッティドッグサインって何?
腰椎分離症を診断するとき、レントゲンの斜め撮影(斜位像)に「スコッティドッグサイン」という所見が現れることがあります。腰椎の骨のシルエットがスコッティッシュテリアという犬の形に見え、骨の亀裂が「首輪」のように映る。これが陽性サインです。
ただ、ここに大きな落とし穴があります。
スコッティドッグサインが陰性でも分離症はある
2026年に発表された腰椎分離症における最新の論文(Spine Surgery and Related Research)のデータが参考になります。終末期の腰椎分離症患者75人(150病変)を調べたところ、スコッティドッグサインが陰性だった病変が全体の41%もありました。
さらに19%の患者は、片側だけ陽性で反対側は陰性。レントゲン上は「問題は片側だけ」に見えても、CTで確認すると両側に分離症があった状態です。
スコッティドッグサインは「陽性なら分離症の可能性が高い」サインですが、「陰性なら安心」には全くなりません。
過去の報告では、レントゲンだけで腰椎分離症を検出できた割合はわずか32%というデータもあります。
プレーできないくらいの腰痛はMRIへ
ここが一番大切な部分です。
スポーツ中に腰が痛くてプレーを続けられない、練習を休まざるを得ない。そのくらいの痛みがあるなら、レントゲンで異常なしでもMRIを撮ることが大事です。
MRIでは骨髄浮腫という変化を確認できます。骨髄浮腫は疲労骨折のサインで、レントゲンにはうつらない段階から検出できます。早期であれば骨癒合が期待できる段階なので、早く見つけるほど治療の選択肢が広がります。
理学療法士として現場で感じるのは、「レントゲン異常なしと言われたからスポーツを続けていた」というケースの多さです。痛みを無視して続けた結果、発見が遅れて骨がくっつかない状態(偽関節)になってしまっているケースも見てきました。
MRIで骨髄浮腫が見つかったら
MRIで骨髄浮腫が確認された場合、次はCT検査で骨折の重症度を詳しく評価します。骨の亀裂の幅(裂隙距離)や角度を確認して、治療方針を決めていく流れです。
この段階で初めてCTが登場します。レントゲンとMRIで段階的に絞り込んでいくイメージです。
放置するとどうなるか
腰椎分離症は早期発見であれば、コルセット固定と運動制限で骨癒合を目指せます。
発見が遅れると骨がくっつかない偽関節になり、将来、腰椎がずれていく「すべり症(腰椎すべり症)」へ進展するリスクがあります。すべり症まで進むと、日常生活にも影響が出ることがあります。
早い段階で正確な診断を受けることが、その後の経過を大きく変えます。
まとめ
レントゲンで異常なしと言われても、スポーツ中の腰痛でプレーができないくらいの状態なら、MRI検査を受けることを検討してください。
スコッティドッグサインはあくまで参考指標。陰性でも分離症を否定できないのが現実です。痛みが続くときは主治医にMRI検査の必要性を相談してみてください。
参考文献
Matsuura S, Tatsumura M, Asai R, et al. Relationship between the Scottie Dog Sign and Cleft Distance in Lumbar Spondylolysis. Spine Surg Relat Res. 2026;10(2):263-268.
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